3. サービス業は小規模主体

続いて、卸売・小売業や飲食・宿泊サービス業などの一般サービス業について見ていきましょう。

大規模化が進む産業とは?
(画像=図4 企業規模別 労働者数 シェア 卸売・小売業 2016年
OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図4が卸売・小売業のグラフです。

図1の一般産業合計のグラフと比較すると、やや小規模企業の割合が大きいようです。

各国間の順位関係は概ね変わらない印象ですね。

企業規模別 労働者数 シェア 卸売・小売業
29か国中 単位:% 2016年
小規模企業 / 中小企業
59.9 2位 / 84.2 3位 イタリア
35.5 12位 / 69.0 17位フランス
22.8 21位 / 59.9 25位 日本2
22.7 22位 / 67.6 19位 ドイツ
20.8 24位 / 56.0 26位 カナダ
16.2 27位 / 45.8 28位 イギリス
13.5 28位 / 53.8 27位 日本1
10.4 29位 / 36.4 29位 アメリカ

大規模化が進む産業とは?
(画像=図5 企業規模別 労働者数 シェア 宿泊・飲食業 2016年
OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図5が宿泊・飲食業のグラフです。

全体的に小規模企業の労働者数シェアが大きめではありますが、日本が特徴的ですね。

日本2で見ると、10人未満の小規模企業のシェアが比較的大きい一方で、250人以上の大企業の労働者のシェアも大きいという特徴があります。小規模企業と大企業とで2極化しているような状況と言えそうです。

一方でドイツは10人未満の小規模企業の労働者シェアは小さめですが、250人以上の大企業の労働者シェアが極端に小さいようです。ドイツではすべての産業で大規模化が進んでいるわけではなさそうで、分野によっては中小企業で働く労働者が多いようです。

大変興味深いですね。

企業規模別 労働者数 シェア 宿泊・飲食業
29か国中 単位:% 2016年
小規模企業 / 中小企業
61.4 1位 / 90.2 7位イタリア
50.1 6位 / 82.3 22位 フランス
31.0 14位 / 60.1 27位 日本2
26.5 17位 / 90.7 5位 ドイツ
26.4 18位 / 79.8 24位 カナダ
19.5 25位 / 52.3 29位 日本1
17.3 27位 / 61.8 26位 イギリス
7.5 29位 / 54.9 28位 アメリカ

大規模化が進む産業とは?
(画像=図6 企業規模別 労働者数 シェア 運輸・倉庫業 2016年
OECD統計データ より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図6が運輸・倉庫業のグラフです。

日本は10人未満の小規模企業の労働者シェアが極端に小さいという特徴があります。ただし、250人以上の大企業労働者シェアがそれほど大きいというわけではなく、中規模、中堅企業の労働者が多いようです。

企業規模別 労働者数 シェア 運輸・倉庫業
29か国中 単位:% 2016年
小規模企業 / 中小企業
20.3 13位 / 57.2 14位 イタリア
18.5 17位 / 42.7 24位 カナダ
12.5 22位 / 42.3 25位 フランス
10.8 24位 / 37.9 28位 イギリス
9.8 25位 / 52.3 19位 ドイツ
8.0 26位 / 34.3 29位 アメリカ
5.3 28位 / 52.2 20位 日本2
3.4 29位 / 50.5 21位 日本1

4. 日本は小規模企業労働者が多すぎるわけではない

今回は、企業規模別の労働者数シェアについて、産業別に眺めてみました。

産業ごとに傾向は異なりますが、他国と比べると日本は必ずしも「小規模企業の労働者が多すぎる」という状況ではないようです。

今回ご紹介した、製造業、建設業、卸売・小売業、宿泊・飲食業、運輸・倉庫業で、どの国も一般産業の7~8割の労働者数を占めます。

改めて各産業での小規模企業の労働者数シェアの日本の順位をまとめてみましょう。日本は多めの数値となる日本2(Number of employees)の数値とします。

小規模企業(10人未満) 労働者数 シェア
日本 29か国中
21位 一般産業合計 (G7中4位)
16位 製造業 (G7中4位)
16位 建設業 (G7中4位)
21位 卸売・小売業 (G7中3位)
14位 宿泊・飲食業 (G7中3位)
28位 運輸・倉庫業 (G7中7位)

中小企業(250人未満) 労働者数 シェア
日本 29か国中
25位 一般産業合計 (G7中4位)
18位 製造業 (G7中2位)
21位 建設業 (G7中3位)
25位 卸売・小売業 (G7中4位)
27位 宿泊・飲食業 (G7中5位)
20位 運輸・倉庫業 (G7中3位)

小規模企業で働く労働者のシェアは製造業や建設業、宿泊・飲食業でやや大きめです。中小企業で働く労働者のシェアで比較すると、製造業は18位でやや大きめですが、建設業は21位となり順位は下がります。

宿泊・飲食業も、中小企業で働く労働者のシェアで見れば27位とむしろかなり低い順位であることがわかります。

これらの事から、日本で働く労働者の内、小規模企業や中小企業で働く人の割合は、他国と比較してそれ程大きいわけではないということが言えそうです。

むしろ割合が小さい方に属し、大規模化も進んでいるようです。宿泊・飲食業が顕著ですが、小規模企業と大企業で労働者が二極化している産業もあるようです。

規模が大きいほど「労働生産性」が高まる傾向にある事は事実ではありますね。

ただ、全ての産業が大規模化すれば良いかというと、そうでもないと思います。小規模でも魅力ある独自サービスなどで付加価値を稼いでいくことも可能なのではないでしょうか。

大切なのは、それぞれの事業環境において、適正規模で付加価値をより稼げるようになっていく事だと思います。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

文・小川製作所/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?