先日、ティラノサウルスは人が早歩きで抜けるほど歩くのが遅かったと判明したばかり。
そこで「どうやって狩りをしていたのか」という疑問が浮上しましたが、その答えは「群れで協力していた」が正解かもしれません。
アーカンソー大学(米)の研究チームは今回、ティラノサウルスは単独ではなく、群れで生活する社会性を持っていたという説を発表しました。
この説は20年ほど前に初めて提唱されましたが、新たな化石現場の調査により真実味が増しています。
研究は、4月19日で『PeerJ』に掲載されました。
目次
ティラノサウルスには社会性を持つだけの頭脳があった?
どう猛なイメージのティラノサウルスは、長い間考えられてきたような一匹狼ではなく、社会的な肉食動物だったかもしれません。
7年前、アメリカ・ユタ州南部にある「グランド・ステアケース・エスカランテ国定公園」で、群れで大量死しているティラノサウルスの化石現場が発見されました。
面積の広さと骨の多さから発掘作業は現在も続けられています。
アーカンソー大学の研究チームは、骨や岩石に含まれる炭素や酸素の安定同位体、希土類元素の濃度を分析し、化石現場の化学的な特徴を調べました。
その結果、現場のティラノサウルスはすべて洪水で命を落とし、同じタイミングで化石化したことが判明し、それぞれが別の場所からやってきた一匹狼ではないことが明らかになりました。
つまり、これらのティラノサウルスは元から行動を共にしていたグループである可能性が高いのです。
同現場は、ティラノサウルスの集団死を証明するものとしては北アメリカで3例目。
最初の例は、約20年前にカナダのアルバータ州で見つかった十数体の化石で、そのときに初めて「ティラノサウルスの社会性」が提唱されました。
その後、アメリカのモンタナ州、今回のユタ州と続いたことで、より真実味を増しています。
他方で、この説に異を唱える意見も少なくありません。
例えば、「ティラノサウルスには社会的なコミュニケーションを取るだけの高い認知機能がなかった」というものや、「資源不足の時代に、水源やエサが豊富にある場所へティラノサウルスが自然と集まっただけかもしれない」という意見があります。
研究チームは今後、そうした反対意見も踏まえて、調査を続けていく予定です。
ティラノサウルスは想像ほど「個の力」に長けていなかったかもしれませんが、裏を返せば、社会性を持つだけの頭脳を秘めていたということでしょう。
肉体派か頭脳派か、いずれにしても恐い存在には変わりないのかも?
提供元・ナゾロジー
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