去る3月5日に「SEIKOのメカクォーツを使った3〜5万円の古典顔クロノグラフ時計が、海外でも人気の理由!」と題した記事を掲載し予想以上に多くの反響をいただいた。そこで今回は同じく海外のマイクロブランド(小規模生産の時計メーカー)も多くが採用している日本のミヨタ製自動巻きムーヴメントについても紹介したいと思う。セイコーやシチズン、オリエントなど自社製ムーヴメントを採用する大手国産時計メーカー以外で、10万円アンダーの機械式腕時計を選ぶ際はこの点も参考にしてもらえるといいかもしれない。
さて、ミヨタという会社は、シチズン傘下のムーヴメン製造メーカーである。つまり、様々な時計ブランドに供給するための汎用ムーヴメントを製造する会社だ。機械式だけでなくもちろんクォーツムーヴメントも生産しているが、特に海外で人気なのは機械式の自動巻きムーヴメントである。日本製であるという信頼性に加えてスイス製に比べて安価のため、マイクロブランドと呼ばれる海外の小規模な時計ブランドの多くが採用している。
ミヨタ製自動巻きにはスタンダードな8000系とプレミアムと呼ばれる最上位機の9000系がある。違いはもちろん性能だ。8000系は振動数が毎時2万1600振動なのに対して9000系は毎時2万8800振動のハイビート機だ。そのため精度も9000系は-10秒から+20秒(8000系は-20秒から+40秒)と高く、そんぶんムーヴメント自体の原価も8000系に比べてかなり高い。
そして、ミヨタを採用する海外のマイクロブランドを見ていると8000系ではなく9000系を使ったモデルも多く見受けられるのだ。ではなぜ9000系が人気なのか。これはあくまでも時計を製作している筆者の経験値からの想像だが、そのメリットは大きく二つだと思う。ひとつには先に紹介したように2万8800振動のハイビート機のため高い精度が出やすいということ。そしてもうひとつは、ムーヴメント自体の厚さが他の汎用ムーヴメントに比べて薄い点も挙げられる。
筆者も時計を作っていてよく頭を悩ませるのが、ムーヴメントの大きさというよりも厚さ(高さ)である。ケースの大きさに対してムーヴメント径はかなり余裕があるため正直どこのムーヴメントであっても変わらないが、厚さとなるとそういうわけにはいかない。そのためケースを薄くしたい場合は、ケースの構造だけでは限界があり、どうしてもムーヴメント自体が薄いものが必要になるというわけだ。
その点ミヨタの9000系は、8000系の5.67mmに対して3.90mmとかなり薄い。そのため今回ここに取り上げさせていただいたコンプレダイバー1960とパートナー II については、ケース全体の厚みを抑えることを優先したため9000系を使用したという経緯があるのだ。
さて、ミヨタ製9000系を搭載したモデルは、先にも触れたように海外だと多いが日本では意外に少ない。特に5万円前後の価格帯となるといろいろ探してはみたものの、もしかするとほかにもあるのかもしれないが、今回はあまり見つけられなかった。そこでここでは、筆者のアウトラインから2機種と、日本ブランドの“ノット”とドイツのブランド“ドゥッファ”の9000系搭載モデルを紹介する。
<メーカーズ ウォッチ ノット|AT-38SVWH1>
2014年創業。日本において“カスタムオーダー”を広めたパイオニアであり、同時に日本の優れたもの作りを世界に伝えるため、メイドインジャパンにこだわった時計を展開するノット。ミヨタのCal.9015を採用するAT-38SVWH1は創業から開発に16カ月以上の歳月を費やしたという部品1つ1つにまで限りなく”日本製”にこだわった高品質が売りだ。
なかでも日本の林精器製造が手がけるザラツ研磨によって仕上げられたクリアで歪みのない鏡面仕上げケースはかなり魅力である。
Maker’s Watch Knot TEL.0800-555-7010