ゾウムシは、世界で約20万種が知られる生物界で最大級の種。

その名の通り、ゾウの鼻ように長く伸びた口吻(こうふん)が大きな特徴です。

米・オレゴン州立大学(Oregon State University)は今回、「ミャンマーで採取された約1億年前の琥珀から、かつてない姿をした新種のゾウムシが発見された」と発表しました。

既知の種とは比べものにならない長さの口吻をしていることから、研究チームは「マンモスゾウムシ(mammoth weevil)」と呼んでいます。

研究は、7月8日付けで科学誌『Cretaceous Research』に掲載されました。

目次

  1. 現生種の倍以上ある口吻

現生種の倍以上ある口吻

ゾウムシは、今から約1億5000万年前のジュラ紀に長い口吻を進化させ、近縁のハムシ上科から分岐しました。

今回の新種は、約1億年前の琥珀に見つかったので、比較的初期に誕生した種と見られます。

保存されていたのはオスの個体で、体長は5.5ミリ。その半分は頭部と口吻に占められています。

学名は、ギリシャ語で「湾曲したくちばし」を意味する「Rhamphophorus」と、ロシアの著名な昆虫学者アンドレイ・A・レガロフ氏の名前を取って、「Rhamphophorus legalovii」と命名されました。

その長さマンモス級!1億年前の琥珀から「史上最長の口」をもつ新種ゾウムシを発見
(画像=現存するゾウムシの一種 / Credit: pixabay ,『ナゾロジー』より 引用)
その長さマンモス級!1億年前の琥珀から「史上最長の口」をもつ新種ゾウムシを発見
(画像=新種のゾウムシの全体像 / Credit: George Poinar Jr. et al. – Cretaceous Research(2021),『ナゾロジー』より 引用)

本種は、11節に分かれた触覚を持つ原始的なゾウムシであり、研究チームはこれを「チョッキリモドキ科(Nemonychidae)」に分類しました。

本科のゾウムシは、ナンヨウスギ、マツ、イヌマキなど針葉樹の花粉を主食とし、温帯地域に生息します。

現存する種は3亜科からなり、新種はそのうちのCimberidinae亜科に属するとのこと。

同亜科には約70種のゾウムシがいますが、今回ほどの長い口吻を持つものは絶滅種も含め、前例がありません。

その長さマンモス級!1億年前の琥珀から「史上最長の口」をもつ新種ゾウムシを発見
(画像=新種の口吻の拡大図 / Credit: George Poinar Jr. et al. – Cretaceous Research(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

研究主任のジョージ・ポイナー博士は、新種の口吻について「メスをめぐるオス同士の争いの際に武器として使われたのではないか」と指摘。

また「足の形態から、植物の表面をつかむ能力や、ライバルのオスに接近する能力がかなり高かったでしょう。

それから今回の化石には、多少の傷跡が見られるため、樹脂にとらわれる前にオス同士で争っていた可能性がある」と説明します。

初期のゾウムシに、これほど奇抜な姿をした種がいたことは大変驚くべきことです。

ポイナー博士は「本種には、ほかのゾウムシに見られない特徴が数多くあるため、種の体系的な位置づけには数年の期間を要するでしょう」と述べています。

しかし、その後のゾウムシの進化を踏まえると、あまりに長すぎる口は不便だったのかもしれません。


参考文献

Ancient, newly identified ‘mammoth weevil’ used huge ‘trunk’ to fight for mates

元論文

A new tribe, genus and species of weevil, Rhamphophorus legalovii gen. et sp. nov., (Coleoptera, Nemonychidae, Rhamphophorini tribe nov.) in Burmese amber


提供元・ナゾロジー

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