子どもにお金の話をすることは難しい。日本の学校では、いまだにお金のことをほとんど教えない。だが、誰もお金とは無縁ではいられない。お金に関する正しい知識を学ぶのに、早すぎるということはない。本書は、若者にお金の役割や向き合い方などを分かりやすく解説している。

『いま君に伝えたいお金の話』
著者:村上世彰
出版社:幻冬社
価格:1,200円(紙版、税抜き)
発売日:2018年9月5日

もの言う投資家として知られた著者が説く「お金の意味」

著者の村上世彰氏は、旧通産省(経済産業省)を辞めてファンドを立ち上げ、多くの企業への投資を行なった投資家だ。株主を軽んじる経営者・経営陣を批判する姿勢から、「もの言う株主」として注目を浴びた。2006年にニッポン放送株をめぐるインサイダー取引の容疑(証券取引法違反)で東京地検特捜部に逮捕・起訴され、最終的に執行猶予付きの有罪判決を受けた。シンガポールに拠点を移し、ファンドは解散したものの、現在は個人投資家として活動、ボランティアや寄付など社会貢献活動にも熱心に取り組んでいる。

本書は、まずお金の意味を説くところから始まる。お金の役割は何かという、いわば基礎からのスタートだ。一見、遠回りにも思えるようなこの基本概念の確認が重要であることは、本書を読み進めていくと分かる。

その上で、自立して生きていくため、やりたいことを実現し生活を豊かにするために、お金が不可欠であることを説く。また何か困った時にはお金が助けてくれること、さらにお金で人を助けることができることについても言及する。

世の中のモノの値段と満足度の関係や、何が無駄遣いでどうすればそれをなくせるのかという考え方に発展していく。高価なモノであっても、その価値が値段に見合い、目的を達成してくれるなら無駄遣いではない。どんなに安くても、価値が値段に見合わず、目的を達成してくれなければ無駄遣いであるという著者の主張は理解しやすいだろう。

変わる社会と投資の重要性

さらに、働いてお金を稼ぐということはどういうことなのか。また働くことの意味についても触れる。「子どものうちに何か一つのことをとことんやってみるという経験は、将来君がどんな仕事をするにせよ、役に立ちます」という著者のメッセージに共感する人も多いのではないだろうか。

今の子どもたちが大人になる頃は、今よりもっと社会や働き方が変わり、新しい仕事を生み出し、お金を貯めて増やすための投資の重要性も詳しく解説する。「お金は稼いで貯めて、回して増やす」という一文は分かりやすい。

お金には魔力もある

安易な借金を戒めているのも特徴である。返せなかったらどうなるかを十分理解して借りないと、「思いもよらない地獄の扉を開けてしまうことになる」。

本書を通じて著者が一貫して訴えているのは、お金は大事だが、恐ろしい魔力もあるという点だ。いいところも悪いところも理解した上で、賢く付き合わなければならない。お金は豊かな生活を送るための手段の一つであり、お金そのものが人生のすべての基準になるのは本末転倒だ。本書はお金のプロを自認し、お金をめぐって自身も波乱の人生を歩んできた著者の実感がこもっている。

本書は、村上氏がこれまで各地の小中学校などで行った「お金の授業」がもとになっているという。主な読者層はその世代だが、社会人としてすでにお金を稼いでいる大人が読んでも役立つ内容だ。

文・MONEY TIMES編集部
 

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