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当時の海底は酸素が薄くて住めなかった?
漂流生活は最大20年と判明!
point
- 中生代のウミユリは、流木につかまって漂流していたことが判明
- 当時の海底が低酸素で住める状態ではなかったため
- 漂流は最大で15〜20年続いたと思われる
今から200年ほど前、イングランド南西部の町ライム・リージスで、不可思議な「ウミユリ(Crinoid)」の化石が発見されました。
ウミユリは、ウニやヒトデ、ナマコの仲間ですが、見た目は植物そっくりの海洋生物です。幼生時は海底に固着していますが、大人になると自由に泳ぎ始めます。
ところが奇妙なことに、発見された化石中のウミユリは、細長い茎のような体が木の断片に繋がっていたのです。
このことから、当時の著名な古生物学者であったウィリアム・バックランド(1784〜1856)は「太古のウミユリは、流木につかまって漂流生活をしていたのではないか」と主張しましたが、今日にいたるまで「バカげた空想」として一蹴されています。
ところが今回、英・ケンブリッジ大学らの最新研究により、バックランドの仮説が正しいことが証明されました。
古代のウミユリは、ある理由から数十年にわたる漂流生活を余儀なくされていたようです。
当時の海底は酸素が薄くて住めなかった?
こちらが問題の化石であり、約1億8000万年前のジュラ紀のものと特定されています。
ウミユリは、これまでに約6000種が知られていますが、現代に生き残っているのはその10%程度です。しかも、現生のウミユリには流木につかまる特性はまったく見られず、この化石だけではバックランドの仮説を証明することもできません。
ところが、1960年代にドイツの町ホルツマーデンで、同時代に当たるとんでもない化石が発見されました。そこには、一本の流木に群がる無数のウミユリのコロニーが確認されたのです。
そして近年の研究により、ジュラ紀のホルツマーデン近海は、海底が低酸素状態にあり、生命が住める環境になかったことが判明しています。
おそらく、ウミユリは、海底を避けるために流木につかまって漂流していたのでしょう。