IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。
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前回、論点㉔で、地域ごとに見ると気温は大きく変動してきたことを述べたが、データは全て海外のものだった。今回は日本のデータを見よう。
海底に堆積したプランクトンの化石から再構築すると、東京湾の表層水温は図1のように復元された。
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これを見ると、東京湾の水温はいまより3℃ぐらいも高い時期が弥生時代から古墳時代にかけて結構あったようだ。
青森県でも同様にプランクトンの化石を分析すると今より水温が4℃も高かったとされる(図2上)。縄文海進期と呼ばれる時代だ。(なお当時の海面上昇はこの気温上昇とは直接関係はなく、氷河期後の大規模な海面上昇に対する地殻とマントルの反動の一部であったことについて、このリンクで第4紀学会による説明がある)。
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水温だけでなく気温も高かったことは、当時の陸地の地層からクリやドングリの花粉が多く見つかっていることからも推計されている(図2下)。
どうして日本の気温と水温はこんなに劇的に変わるのか。それは日本が暖流と寒流のぶつかり合う場所にあって、その流れ方が数百年・数千年スケールで大きく変化するためだ。図3が縄文海進期についての模式的な説明になっている。
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このように、局所的には、3、4℃程度の気温や水温の上昇は自然変動として起きてきた。
「地球温暖化で100年かけて1℃気温が上昇してきた」といっても、それで「人類が存亡の危機に立っている」などという訳ではない。そのくらいの変化は、我々の先祖はとっくに経験済みで、何とか対処してきた。
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1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
文・杉山 大志/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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