抗血小板第4因子(PF4)抗体が陽性でありながら、ワクチン接種との因果関係が不明となった血栓性血小板減少症(TTS)

TTSは、全身の微小血管に血栓が形成されることで発症する重篤な疾患である。コロナワクチンの接種後に、TTSが発症することが報告され、抗PF4抗体の出現が本症の発症と関連することが明らかになった。日本脳卒中学会・日本血栓止血学会が発行した診断の手引きにおいても、抗PF4抗体陽性が診断根拠とされている。

これまで、日本では12人のTTSによる死亡例が報告されているが、ワクチン接種との因果関係を認定された例はない。抗PF4抗体が陽性でありながら、ワクチン接種との因果関係は不明となった47歳の男性を紹介する。


経過:2回目のワクチン接種翌日から不穏状態。体幹、四肢に著明な出血斑出現。血小板減少を確認。ワクチン接種6日後に脳出血で死亡。

剖検医の診断:血清髄液。橋出血による脳ヘルニアが存在。抗PF4抗体陽性よりTTSによる脳出血と診断。

専門員による評価:脳静脈洞には明らかな血栓は認めなかったものの、経過などからはTTSに伴う脳静脈血栓症も否定しきれない印象である。サイトカインストームなどによる急性脳症の可能性も考えられる。いずれにしても、40代の特記すべき基礎疾患のない症例であり、 ワクチン接種と死亡との因果関係を完全に否定することは出来ず、更なる情報の収集・解析が望まれる。 血小板減少を認めること、画像所見や検査値異常(Dダイマー上昇)は血栓症を示唆するが確定的ではない。抗PF4体が陽性であり、事象は ワクチン投与に関連する可能性が大きいと考える。

筆者の見解:第79回厚生科学審議会に提出された副反応報告には、ファイザーから55人、モデルナ・武田から12人、アストラゼネカから2人のTTS症例が報告されている。このうち抗PF4抗体陽性の2人がワクチン接種との因果関係が認められα判定となっている。接種ワクチンはアストラゼネカが製造したアデノウイルスベクターワクチンであり、死亡していないので、この2人がα判定となったのか、ファイザーワクチン接種後に死亡した症例は、抗PF4抗体が陽性でありながら、なぜγ判定となったのか理由が不明である。

これまで、厚生科学審議会に報告された新型コロナワクチン接種後に発生した1690件の死亡事例のうち、担当医がワクチン接種との因果関係ありと報告した件数が112件、病理解剖された件数が115件、さらに病理解剖されかつ因果関係ありとされた件数が28件あったが、検討部会では全て因果関係は評価できないとしてγ判定となっている。

実際に患者を診察した医師や解剖にあたった病理医の判断とは異なる判定を下すには、それなりの根拠が必要である。99%がγ判定とされている現状から、判定基準を外部に周知する必要があると思われる。

コロナワクチン接種後の死亡事例の因果関係を考えるにあたっては、その死因を3つに区分すると理解しやすい。

今回、紹介したアナフィラキシーやワクチン起因性TTSなどワクチン接種と疾患発症との関連性が証明されている疾患については、診断が確定すれば因果関係ありと考えてもよい。この基準に照らせば、因果関係ありと判定してもよいケースは少なからずみられる。遺族にとって、検討部会での判定は最後の拠り所だけに、遺族に不信感を与える判定は避けなければならない。

文・小島 勢二

文・小島 勢二/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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