こんにちは。
今日も、おもしろいご質問をいただいておりますので、お答えしたいと思います。
ご質問:「中国国家主席の習近平がグローバル派で、アリババ創業者のジャック・マーは反グローバル派」とお考えだそうですね。てっきり反対だと思っておりましたので、どうしてそうお考えなのか、理由をお聞かせください。
お答え:グローバル派と反グローバル派は、世界を股にかけて活躍している人か、一国あるいは一地域にとどまっている人かで区別すべきではないと思っています。
グローバル派とはエリート主義者のことです
私の考えでは、グローバル派とは「できるだけ優秀な人材を集めて、できるだけ広い地域で大勢の人を自分の支配下に置きたい」と考えるエリート主義者のことで、反グローバル派とは、それに反対するすべての人たちのことです。
ですから、反グローバル派の中には、エリート主義が嫌いだという人もいますし、世界全体がひとつの政府のもとに統一されることを不快に感じる民族主義者もいると思います。
習近平はすでに中国という世界最大の人口を擁する大国の国家元首になっていますから、自分の現在の地位を危険にさらすような野心を表に出すことはないでしょう。ですが、もしチャンスがあるなら世界統一政府の元首になりたいと思っているはずです。
逆に、クラウス・シュワブは、今のところひんぱんにエリート主義者たちが意見交換をする場所を提供しているだけの私人という気楽な立場ですから、堂々と世界支配の野望について語ることができるのでしょう。
アリババ創業者のジャック・マーについて、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスやマーク・ザッカーバーグと似たようなエリート主義者だとお考えの方もいらっしゃるようですが、私はまったく違うタイプの人だと思っています。
彼が中国当局の逆鱗に触れた理由は、国有企業という名の既得権益団体に融資という名の利権をばら撒くだけの存在になっている中国国有大銀行グループすべてを批判して、「エリートによる大衆操作のための銀行から、大衆が自立するための銀行へ」という大胆不敵な改革を主張したことです。
そのジャック・マーがグループ傘下の金融会社、アント集団に開発させた銀行口座を持っていない人でもキャッシュレス取引ができる仕組みが、彼に招かれてゴールドマン・サックス副会長からアリババ集団社長に転じた人間によって、世界市民総監視体制の道具に使われようとしています。
ジャック・マーは今も名誉職的な立場でアリババ集団内で生き延びているようですが、絶対に不愉快に思っているに違いないこうした流れを押しとどめることは、もう現在の彼には不可能でしょう。
エリート主義者に取ってすべては支配のための道具
エリート主義者の特徴は「大衆が言いたいことを言い、やりたいことをやる社会は絶対にうまく機能しない。だから、我々エリートが彼らを教え導いてやらなければならない」という信念を持っていることです。
つまり、彼らにとっては自分たちが支配者として権力をふるうことが最高の善なので、そのためには大勢の人たちが多大な被害をこうむるようなことも平然とやってのけます。
現代中国を見ていてとても分かりにくいのは、習近平を始めとする中国共産党の幹部党員たちが、中国人の大多数が貧しくなるに決まっている方針をとっていることです。
でも、これもまた、あまりにも理不尽な政策をごり押しすることによって、やむにやまれず党内反対派が批判勢力として浮かび上がってきたら、その連中を一網打尽にしてますます自分たちの権力を確固としたものにすることができるなら、当然しょいこむべき負担だと考えているのでしょう。
アメリカも似たようなものですが、現代中国経済はどこがどう悪いというより、どこか1~2ヵ所でもまっとうに機能しているところがあるのかと思うほどの、深刻な機能不全に陥っています。