(OECD「Trade in Value Added(TiVA)」ほか)

前回解説した政府の総合緊急対策は、足元の急激な資源高・円安を受けた物価上昇に対する家計の生活支援を中心とした「止血策」としての意味合いが強い。政府は7月の参議院選挙前に経済対策の「第2弾」を取りまとめる方針だ。

燃料油価格の激変緩和措置の10月以降の延長等に加え、「新しい資本主義」関連の施策も盛り込まれるとみられる。選挙対策としての意味合いもあることから、10兆~20兆円規模の補正予算が編成される可能性が高い。

次なる経済対策では、規模を積み増すだけでなく中身も重要になる。求められるのは、中期的な視野に基づく施策だ。今回のウクライナ情勢の緊迫化を受けた資源価格上昇により、われわれは資源輸入国としての日本の脆弱性を再認識させられた。エネルギーの安全保障を確保する観点から、脱炭素化を推進して化石燃料への依存度を低下させ、輸入コスト上昇に対する経済の頑健性を高めなければならない。

脱炭素化の推進に向けては、追加的な必要投資額における中小企業の負担を軽減する必要がある。政府が掲げる「2030年温室効果ガス46%削減」目標の実現には、30年までに累計で10兆~20兆円程度の財政負担が必要になると筆者はみている(図表1)。グリーン成長戦略(20年)で創設されたグリーンイノベーション基金の規模は10年間で2兆円にとどまり、力不足だ。基金の拡充等が求められる。

産業競争力育成の観点からも中期的な施策が必要だ。足元では、円安が輸入物価上昇を増幅させることを通じたデメリットが顕在化し、以前より円安のメリットが発揮されない「悪い円安」が進む。製造業の海外生産シフトや半導体などの供給制約に加え、円安局面においてもエレクトロニクス分野等で付加価値ベース輸出額が伸び悩むなど、日本産業の国際競争力が趨勢的に低下してきている(図表2)。技術革新の支援などを通じて、産業競争力を中期的に高めていく必要がある。

脱炭素化と日本企業の競争力向上へ求められる支援策の拡充
(画像=『きんざいOnline』より引用)
脱炭素化と日本企業の競争力向上へ求められる支援策の拡充
(画像=『きんざいOnline』より引用)

文・みずほリサーチ&テクノロジーズ 上席主任エコノミスト / 酒井 才介
提供元・きんざいOnline

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