企業の株式や社債に投資をすることは、株式や社債という有価証券を買うのではなくて、その企業の営む事業に投資することであり、事業に投資することは、その事業が生み出すキャッシュフローに参画することである。
厳密にいえば、キャッシュフローを生み出すためには費用がかかるわけだから、入ってくるキャッシュのインフローと、出ていくキャッシュのアウトフローの差、即ち、ネットの事業キャッシュフローが投資の対象となる目的物である。
投資の本質は、このネット事業キャッシュフローに投資することに帰着するが、伝統的には、投資とは、直接に事業キャッシュフローに投資するのではなくて、企業に対する投資を経由して、企業に事業キャッシュフローの創出を委任することであった。しかし、事業の構造が単純であれば、企業のような大掛かりな経営の仕組みは必要ないので、ファンドといわれる投資の器を利用すれば済む。
例えば、不動産に投資することは、賃料収入というキャッシュフローに投資することであり、発電施設に投資することは、売電代金というキャッシュフローに投資することだが、そこでは、キャッシュフローを生む仕組みが単純なので、ファンドを通じた投資手法が主に使われている。
ファンドの利用には、事業構造が単純なだけではなく、リスクが制御されていることも必要である。例えば、不動産投資においては、テナントがいなくなり、新たにテナントの入る見込みが確定的に失われて、完全に投資価値を喪失する事態は極端に稀で、通常のリスクは、稼働率が低下する、あるいは、賃料が低下することにより、キャッシュフローが少なくなる可能性、つまり、投資収益率が低下する可能性にすぎない。
発電施設への投資については、費用支出が大きく、その変動性も大きいうえに、売電価格も変動するので、ネットのキャッシュフローが簡単にマイナスになってしまうリスクがある。故に、実際に投資対象として構成されている発電施設は、風力や太陽光のように、費用構造が一般の不動産に近いものとなっているのである。
文・森本 紀行/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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