株価変動のリスクは、上場株式に投資する以上、避け得ない不随リスクだが、本質的なリスクではない。本質的なリスクは、企業のネット事業キャッシュフローの持続的成長にかかわる不確実性である。勿論、この二つのリスクは、密接に関連したものだが、同時に、明確に異なるものである。

株式投資の真のリスク
(画像=123RF、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

株価は、理論的には、企業のネット事業キャッシュフローの期待値の現在価値である。故に、成長期待の高い企業ほど、株価は高くなる。しかし、現在価値とは、遠い先の将来まで見込んだものだから、小さな期待の変化でも、株価に大きく反映してしまう。

本来は、株式投資の本源的リスクは、企業価値変動にかかわるリスクなのだが、上場株式の場合には、そこに、単なる価格変動のリスクが必然的に付随して、大きな攪乱要因になってしまうのである。

一流の投資家や運用会社では、株式投資の本源的リスクと株価変動という不随リスクを混同することはないが、同時に、株価変動を無視するものでもない。株価変動による一時的な価格の下落に対する対抗力を備えたうえで、株式投資の本来の目的である企業の事業キャッシュフローの持続的成長に参画していく、つまり、適切に株価変動という付随リスクを管理しながら、正しく賢く、本来の事業キャッシュフローについてのリスクテイクに徹しているのである。

しかし、個人投資家では、また、機関投資家においてすら、多くの場合、ちょうど逆に、事業キャッシュフローのリスクテイクという本質を見失い、株価変動に一喜一憂するなかで、売るべきではないところで売ることで、損をしてしまうのである。

この問題を長期投資の必要性と表現する人は、世の中に大勢いる。しかし、そこでは、短期的な株価変動を本質的な要素としているからこそ、長期投資の必要性が強調されているとみられ、株式投資の本質が事業キャッシュフローにかかわるリスクテイクであることについては不明確にされている。

むしろ、問題を時間の要素に解消することで、上場株式固有の付随リスクであるにすぎない株価変動を、さも株式投資の本質的なリスクテイクの対象であるかのように誤認させる弊害を生んでいるようである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長

文・森本 紀行/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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