近視の若年化が、世界中でますます進んでいます。

アジアの先進国では、学齢期の子供たちのうち80~90%が近視だと言われているほどです。

そして近年の研究では、「日光を浴びることが近視の予防に役立つ」と判明しています。

そこでアメリカ・ブルックリンを拠点とするBetterlab社は、日光を蓄えて浴びせる「近視予防メガネ」を開発中です。

これはメガネといいつつレンズのない伊達メガネですが、光の照射によってかけるだけで近視が予防できるといいます。

この新しい技術は、現在特許出願中です。

目次
日光不足が近視を招く
日光を蓄えて放射する「近視予防メガネ」

日光不足が近視を招く

日光を蓄積し「近視が予防できるメガネ」が開発される!
(画像=日光が近視の予防になる / Credit:Betterlab、『ナゾロジー』より引用)

近視の原因としてよく知られているのは、長時間スクリーンを見つめることや、暗闇で本を読むことでしょう。

しかし最近の研究では、日光を浴びないことも近視の原因になりえると報告されています。

ではどうして日光を浴びることと、近視が関係するのでしょうか?

まず、どのようにして近視が生じるのか、目の構造から考えてみましょう。

人間が物を見るとき、入ってきた光は水晶体によって網膜(眼球の奥)で焦点を結びます。

日光を蓄積し「近視が予防できるメガネ」が開発される!
(画像=眼軸が長くなると近視になる / Credit:Santen、『ナゾロジー』より引用)

正常な目では、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が標準なので、スムーズに焦点が合います。

しかし近視の目では眼軸が長くなっているので、網膜の手前で焦点が合ってしまい、遠方を見ようとするとぼやけてしまうのです。

つまり眼軸が長くなると近視になってしまいます。

そして最近のさまざまな研究により、日光を浴びることで眼軸が長くなるのを防げると分かったのです。

実際に2015年の研究は、子供たちの日光浴を増やすことで近視を予防できたと発表しています。

とはいえ、電子機器の利用が欠かせない現代社会では、生活パターンを変化させて日光浴の時間を増やすのは簡単ではありません。

では、効率よく日光の近視予防効果だけを引き出すことはできるでしょうか?

日光を蓄えて放射する「近視予防メガネ」

日光を蓄積し「近視が予防できるメガネ」が開発される!
(画像=日光を蓄えて480nmの波長の光を照射する / Credit:Betterlab、『ナゾロジー』より引用)

新しく開発されたメガネにはレンズが入っていません。

近視を矯正するのが目的ではなく、近視を予防するのが目的だからです。

このメガネフレームには特殊な蛍光樹脂が塗られており、日光を蓄えて放出できます。

そのためユーザーは、メガネをかけるだけで、室内でも近視予防に効果的な波長の光を目に当てることができるのです。

近視予防に効果のある波長については、いくつかの見解がありますが、このメガネは2015年の研究で最も効果的だとされた480nmの波長が放射されるようになっています。

Betterlab社によると、「近視予防メガネは太陽光を1分間浴びるだけで25分の放出が可能」とのこと。

1日2回の装着で日光不足による近視を防げると考えられています。

子供の近視を防ぐために入手したい人も多いでしょう。

とはいえ、現在は特許出願中です。

製品としての正確な効果が証明されたわけではないので、今後の進展を慎重に見守ることができるでしょう。


参考文献

These lensless, glow in the dark glasses could stop myopia


提供元・ナゾロジー

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