神々の黄昏@国立歌劇場。この歌劇場では、15年くらい前に”魔笛”、数年前に”ドン・ジョヴァンニ”しか見ていない。ようやくモーツァルト以外の作品に遭遇、しかも最愛オペラ作曲家に当たってうれしい~♪
ニヤニヤしながらオケピット覗き、ワクワクしながら暗く陰鬱な一幕最初の音を待つ。
そして5時間半後、泣きそうになりながら思う。ワグネリアンでいられて心から幸せだ、と。
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”神々の黄昏”は、オーケストレーションが本当に素晴らしい。
リングの中では”ワルキューレ”が一番人気だろうけれど、私は、神々〜の方が好み。ブリュンヒルデとジークフリートの登場シーンの高揚感は気持ちいいし、ラインへの旅やジークフリートの死はあまりに美しい音楽だし、ブリュンヒルデの自己犠牲は感涙もの。ラストの数分も涙をそそる旋律。
ワーグナーで2〜3番目に好きな作品だけど、観るのはこれが2回目。最初は、10年以上前、エクサンプロヴァンス音楽祭で、ベルリンフィル&ラトル。圧倒的な音の厚みと、アンネ=ゾフィー・フォン・オッターがブリュンヒルデの妹で登場したのが印象的だった。パリではなかなか上演されないし、されたとしてもレベルを考えると、躊躇する。ドイツに住んでいればなぁ・・・。
今夜の国立歌劇場オーケストラは、金管の誰かがちょこっとフガフガしてたくらいで、あとは素晴らしい音色。
キリッとした音響に合っているキレのよい指揮もいいな。Axel Koberアクセル・コバー。知らない指揮者。後で調べたらバイロイトに出ているそう。なるほど、じゃあこのチクルスも余裕なのね。”ジークフリートの死”のキレというか明朗な感じとか、ベタベタせず凛としていて好き。
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演出はSven-Eric Bechtolf。スヴェン=エリック・ベヒトルフって読むのかな?シンプルだけれど決して悪くない。下品にならなければそれでよし、というくらい演出に期待しなくなった今日この頃、、。映像の使い方がお上手。ラストシーンだけ、火と水の映像を品よく利用していて、炎に包まれて神々の世が崩壊し、ラインの水の中にすべてが飲み込まれて無になる感じが、映像美で上手に表現されている。見ている側も、炎と水そして美しい音楽に溺れていく感覚が、視覚的にも聴覚的にもすごく気持ちいい。
オケ&指揮、演出がなかなか上、歌手たちも素晴らしい。特にブリュンヒルデのNina Stemmeニーナ・シュテンメ、極上!ドラマティックな響きに満ちた声は、ブリュンヒルデそのもの。しかも姿というか雰囲気も、まさにブリュンヒルデで圧巻。イゾルデもすごくいいだろうな。(彼女がカーテンコールで最初に出てきた時の、割れるような地響きのようなブラヴァー!、すごかった。)
ハーゲンのAlbert Dohmenアルベルト・ドーメンも、なかなかの迫力でドラマ性も兼ね備えてる。この人のハンス・ザックスを聴いてみたい。
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他の歌手たちもかなりよくて、パリでよくある歌手ストレス(オケストレスは言うまでもなく)が全然ない。さすがウィーン国立歌劇場。集まる歌手のレベルが違うなぁ。特に、歌える歌手が限られるワーグナー作品だと、パリは本当に厳しい。
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素晴らしい5時間半の果て、ラスト数分は、目を潤ませながら、お願いだから終わらないで!もっともっと鳴らし続けて!と心の中で祈り続ける。
オーケストラ、指揮、歌手、演出、全てのレベルが高く揃った素晴らしいワーグナー体験。夢中で拍手しながら、このタイミングのウィーン旅を実現してほんっとよかった、としみじみ。
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ワーグナーという興奮剤は、お腹を減らせる。
一幕後は、カフェ・ザッハーで、ザッハートルテ&アインシュペンナー(ウィンナコーヒー)。メランジュ(カフェクレーム)を頼んだのに、アインシュペンナーが運ばれてきた。”メランジュ頼んだんですけど”と言うと、スタッフが”これメランジュです”と。相変わらずスレまくりのカフェ・ザッハー、、。ま、いっか。早く食べて歌劇場に戻らないといけないしね。
数年前にできたサロン・ザッハーが閉店しちゃってて残念。雰囲気よくて空いてて好きだったのに。
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22時半の終了後、興奮と感動でまたまたお腹すいちゃったので、カフェ・ハヴェルカへ。
初めてウィーンに来た時以来のハヴェルカ。23時近く、まだまだ気温は高く、外テラス大賑わい。
でもこのカフェは内装というか中の雰囲気が魅力なので、ガラガラの店内で、今度こそメランジェと、深夜のハヴェルカ名物ブフテルン(プラムジャム入りブリオッシュ)で腹ごなし。昔はタバコの煙がすごくて長居できなかったけれど、禁煙の時勢、ゆっくりゆったりありし日々のウィーン風情を楽しめる。
横の席の老カップルもオペラ帰り。”素晴らしい時間でしたね”と、コーヒーカップを掲げて笑顔を交わし、極上オペラ体験の感動に浸りながら、ウィーン初日を終える。
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編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年5月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。
文・加納 雪乃/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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