(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」ほか)
資源高・円安を背景とした物価高による家計への影響が懸念されるなか、政府は4月26日、コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を策定した。燃料油価格の激変緩和措置を拡充・延長するほか、低所得子育て世帯への給付を実施するのが主な内容だ。資源高や円安そのものを政府・日本銀行が直接コントロールするのは難しいことを踏まえると、その副作用である物価高への対応が現実的な政策対応の中心とならざるを得ない。
以下、総合緊急対策の目玉である燃料油価格の激変緩和措置の効果について考えてみよう。今回の対策により、燃料油元売り事業者に支給する補助金上限額は「1リットル当たり35円」に拡充され(35円を支給しても価格維持目標を超える場合は、超過額の半額をさらに上乗せ)、価格維持目標についても168円へ引き下げられる(7月以降は2週間に1円ずつ目標を引き上げ)。
供給不安に伴う原油価格の高騰(WTI原油価格が1バレル=120ドル程度で推移)と円安基調の継続(1ドル=130円程度)を想定した場合、ガソリン価格は自然体で4~6月期に200円台まで上昇する計算になる(図表)。これに対し、燃料油価格の激変緩和措置が適用される場合、4~6月期以降のガソリン価格は170円台前半まで抑制される。激変緩和措置がなかった場合と比べて、一時的にコアCPIを最大0.7%押し下げると試算される。
世界経済減速に伴う需要鈍化を受けて、年後半以降に原油価格は徐々に低下する可能性が高いが、それでも10~12月期時点のガソリン価格(緩和措置なしの場合)は190円台半ばで推移すると予想している。今回の対策では9月までの延長が講じられているが、10月以降も(補助金支給額を縮小しつつ)激変緩和措置は延長される可能性が高いだろう。
仮に10月以降も措置が延長された場合、2022年度平均で見てコアCPIを0.4%程度押し下げ、家計全体の実質所得を1.2兆円程度引き上げると試算される。家計負担の軽減効果は相応に大きいといえるだろう。
もっとも、物価高対策が重要だからといって事業者への補助金支給をいつまでも続けるわけにはいかない。企業による省エネ設備導入やグリーン化関連の基礎研究の支援、家計による省エネ製品等への買い替えを促す補助金の支給など、中期的な視野に立って燃料依存度を引き下げる政策の一層の推進が求められる。
文・みずほリサーチ&テクノロジーズ 上席主任エコノミスト / 酒井 才介
提供元・きんざいOnline
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