「リジェネロン・サイエンス・タレント・サーチ(Regeneron Science Talent Search)」は、アメリカの高校3年生を対象とした科学コンテストです。

毎年、将来有望な若者たちがファイナリストに選出されます。

そしてバージニア州マクリーンに住む17歳のベンジャミン・チョイさんは、2022年のファイナリストのひとりです。

彼は何千もの脳波データを分析することで、「脳波で操作できる安価な義手」を開発しました。

目次
17歳の若き才能が「脳波で操作する義手」を開発

17歳の若き才能が「脳波で操作する義手」を開発

現在、世界中の多くの人が手足を失ったまま生活しています。

アメリカだけでも推定200万人が同じ苦しみを抱えているのです。

しかし、義肢などの補助製品を利用できているのは、そのうちのたったの10分の1だと言われています。

なぜなら義肢が非常に高価だからです。

また脳神経で動かすような義肢には、大きな手術が必要となります。

米国の高校生が「脳波で操作できる義手」を開発!
(画像=アメリカに住む17歳のベンジャミン・チョイさん / Credit:SocietyforScience(YouTube)_Regeneron STS 2022 – Ben Choi(2022)、『ナゾロジー』より 引用)

今回の主役である高校生エンジニアのチョイさんも「脳外科手術と装具に45万ドル(約5700万円)以上かかる場合があります」と述べ、ハードルが高すぎる点を指摘しています。

そこで彼は、もっと安価で、体の負担が少ない義手を開発することにしました。

そのために利用したのはAIです。

チョイさんは、何千もの脳波データを収集。これらを利用して独自に開発したAIを訓練したのです。

その結果AIは、ヘッドセットで脳波を感知して、人間が念じた手の動きを理解できるようになりました。

投稿された動画には、3Dプリントされたロボットアームを脳波で動かし、物を移動させたり手を振ったりしている様子が映し出されています。

しかもこのシステムにかかった費用は、合計300ドル(約3万8000円)未満とのこと。

チョイさんは、「45万ドルのシステムと比べても遜色ない性能をもっている」と主張しています。

米国の高校生が「脳波で操作できる義手」を開発!
(画像=3Dプリントされた安価なロボットアーム / Credit:SocietyforScience(YouTube)_Regeneron STS 2022 – Ben Choi(2022)、『ナゾロジー』より 引用)

そして彼は、この発明と研究により、科学コンテスト「2022 リジェネロン・サイエンス・タレント・サーチ」のファイナリスト40人のひとりに選出されました。

さらにチョイ氏は学校でスカッシュの代表選手、生徒会長も務めているようです。

科学者としても、その他の分野でも、将来有望な17歳なのです。

また彼は将来の夢に「AIを善いことのために使う」ことを挙げています。

きっと将来は困っている多くの人を助けるため、今回の義手のように、その力と頭脳を存分に振るってくれることでしょう。


参考文献

Forty Accomplished Young Scientists Named Finalists in the 2022 Regeneron Science Talent Search

A teen inventor demonstrates his mind-controlled prosthetic arm


提供元・ナゾロジー

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