善光寺は無宗派だが、天台宗と浄土宗の山内寺院に護持されている。宿坊も「院」がつく25院が天台宗、「坊」がつく14坊が浄土宗の宿坊で、全39坊が建ち並ぶ。この日は「兄部坊(このこんぼう)」にお世話になった。
門前に一晩滞在できる喜び。早起きでお朝事に参列

「兄部と書いて『このこうべ』と読む姓があります。万葉集にも記載され、寺社・宮中における職業集団の長の役職名で、兄部坊が堂童子(どうどうじ)という役の取り仕切り役を仰せつかっていたと聞いています」
住職の若麻績(わかおみ)善正さんが迎えてくださった。寺名と同様、名字も独特であるが、浄土宗14坊の住職は全て若麻績姓だそうだ。若麻績の家は本田善光の末裔と伝わり、血縁者のみが寺を継ぐことができる決まり。こうした宿坊に泊まると、やはり伝統ある善光寺に滞在しているんだなという実感が湧く。


早朝、お朝事に参列した。365日欠かさず行われている全山の行事である。厳かに声明(しょうみょう)が謡われ始める。詩吟のような独特の響き。お朝事も天台・浄土それぞれの宗派の法要が約30分ずつ勤められる。
天台宗の本坊「大勧進(だいかんじん)」導師の読経が始まり、周りの僧もそれに合わせ、堂内に高々と響きわたる。最後に導師が参列者に向かって「南無阿弥陀仏」と10回唱えてくださった。入れ替わるかたちで、浄土宗の「大本願(だいほんがん)」の導師と僧による法要に移る。
同じく30分ほどの読経後に導師が「南無阿弥陀仏」と参列者に向けて10回、読唱。大本願の導師は尼僧である。大勧進導師の力強いお声に対し、きりっとした優しいお声が堂内に響いた。善い一日になりそうだ。
宿坊「兄部坊」でいただく精進料理



浄土宗14宿坊のひとつ
兄部坊(このこんぼう)

「昔の100年、これからの100年も変わらない善光寺。次につなげていきたい」と話す住職の若麻績さん。若麻績さんは先代を継ぎ、住職となって6年目という。
長野県長野市元善町463
TEL:026-234-6677
チェックイン・アウト:15:00・10:00
宿泊料:1泊2食付き1万1000円〜
アクセス:(電車)JR「長野駅」より徒歩約30分、(車)上信越自動車道「長野IC」より約25分
文/上永哲矢 撮影/遠藤 純
提供元・男の隠れ家デジタル
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