人口知能(AI)が人間に勝利することはよくありますが、それは特定の分野だけに限ります。
汎用性という面では、まだまだ人間の能力に及ばないのです。
しかし最近、イギリスの人工知能会社「DeepMind」は、600種類以上のタスクを実行できるAI「Gato」を開発しました。
このAIは、ゲームやチャット、ロボットアームの操作などさまざまな作業をこなせます。
今後スケールアップするなら、それはもう「人間レベルのAI」と言えるかもしれません。
研究の詳細は、プレプリントサーバ『arXiv』に2022年5月12日付で発表されています。
目次
人間レベルの知能をもつ「汎用人工知能」
「604種類のタスクをこなせるAI」は汎用人工知能に近いのか?
人間レベルの知能をもつ「汎用人工知能」
現在開発されている人工知能のほとんどは、特定の分野だけに特化しています。
チェスAIであれば、チェスのルールや試合をひたすら学習させて特化させることで、人間にも勝てるのです。
しかしこのようなAIは、別のタスクでは全く役に立ちません。
チェスAIはチェスの試合だけ、文章作成AIは文章の作成だけ、創薬AIは薬の開発だけに役立つのです。
では、人間のようにさまざまなタスクをこなせるAIをつくることは可能でしょうか?
現段階では不可能です。
とはいえ、この分野の研究は続けられています。
人間レベルの知能をもつAIは「汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)」と呼ばれます。
特化型AIを生み出す他のAIプロジェクトとは異なりますが、多くの科学者たちが、汎用人工知能の実現を目指しているのです。
そして最近、汎用人工知能に少しに近づいたAIが発表されました。
そのAIは、これまでのような特化型ではなく、600種類以上ものタスクを実行できるというのです。
「604種類のタスクをこなせるAI」は汎用人工知能に近いのか?
DeepMind社が開発したAI「Gato」は、単一のニューラルネットワーク(人間の脳の神経細胞のように働くシステム)によって動作しますが、1つのタスクを行うだけではありません。
合計604種類の異なったタスクを実行可能なのです。
実際にアメリカのビデオゲーム「Atari」をプレイしたり、画像に説明文を付け加えたりできます。
また人間とチャットしたり、ロボットアームを操作してブロックを積み上げたりすることも可能。
膨大の作業をたった1つのAIがこなせるようになったのです。
では、AI「Gato」は汎用人工知能と呼べるでしょうか?
科学者たちは、「まだまだそのレベルには到達していない」と判断しています。
なぜならGatoには、人間のように必要に応じて学習していく機能が備わっていないからです。
つまりGatoは、事前にトレーニングしたモデルを1つに集約させただけであり、本当の汎用性を身に付けていない、というのです。
またGatoが実行できるタスクも、それぞれの性能はそこまで高いレベルではないようです。
とはいえ、イギリスのヘリオット・ワット大学に所属するコンピュータ科学者オリバー・レモン氏は、このAIにも可能性を見いだしています。
「このようなAIを発展させることで、より適応性の高いモデルをつくるための基盤を生み出せるかもしれない」というのです。
確かにGatoのレベルでは、汎用性人工知能になりえません。
しかし、実行できるタスクがさらに増えていくなら、実用可能なレベルに到達するかもしれません。
ゲーム攻略しながら、滑らかに人間とチャットできるAIがいれば、それだけでもオンラインのゲームプレイヤーには人間がそこにいるように感じられるでしょう。
一般的に多数のタスクを高いレベルでこなせるようになったAIは、まるで人間のように機能します。
さらに、それら膨大なタスクを集約させる過程で、汎用性の基礎を発見できるかもしれません。
現在、人工知能はゆっくりと人間の知能に近づいてきており、その都度、新しい可能性を示しています。
提供元・ナゾロジー
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