もし職場や普段の生活で「自信のなさ」に悩んでいるなら、スーパーヒーローのポーズを取るといいかもしれません。

スーパーヒーローは、背筋を伸ばして胸を張り、少し大股で、腰に手を当てるポーズを取ります。

研究者らは、これを「パワーポーズ(power pose)」と呼び、著名人や実業家によく見られることを指摘します。

そしてこのほど、独マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク校(MLU)、米オハイオ州立大学(OSU)らの共同研究により、パワーポーズは自信を高め、より肯定的な自己認識を促すことが示されました。

「気持ち」は姿勢から作れるかもしれません。

研究の詳細は、学術誌『Psychological Bulletin』に掲載されています。

目次

  1. パワーポーズで自信や行動力にポジティブな変化が

パワーポーズで自信や行動力にポジティブな変化が

心理学者は以前から、内面的な気持ちが、表情や姿勢に反映されると指摘していました。

たとえば、悲しいときはうつむきがちになり、怖いときは首をすくめて背中を丸めるでしょう。

逆に、幸せだったり自信に満ちているときは、胸を張り背筋が伸びています。

ある研究によると、この効果は逆方向にも働き、姿勢が気持ちに影響を与えることもあるそうです。

その中で「パワーポーズ(power pose)」が注目され始めたのは、2012年のこと。

社会心理学者のエイミー・カディ(Amy Cuddy)氏が、TED Talksにて、「パワーポーズは、血中のコルチゾール(ストレスホルモン)の低下とテストステロン(男性ホルモン)の上昇を促し、それによって自尊心や自信を高める」と発表しました。

かなり大胆な主張ですが、本当にそのような効果があるのでしょうか?

「ヒーローポーズ」を取ると、実際自分への自信が高まる可能性がある!
(画像=パワーポーズで自信は本当に高まるのか? / Credit: jp.depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

そこで本研究チームは、「パワーポーズ」に関する約130の先行研究を対象に、そこに含まれる合計9779人の参加者の実験データを分析しました。

主な目的は、意識的にある姿勢を取ることが、その人の自信・行動・ホルモンレベルに影響を与えるかどうか調べることです。

そして分析の結果、パワーポーズを取った人は、自分に自信を感じるようになり、より肯定的な自己認識にいたることが示されました。

行動面でのポジティブな変化も促しており、参加者はパワーポーズをとっているとき、より粘り強くタスクに取り組むことがわかっています。

また、これらの効果には、男女差や年齢差がなく、大部分の参加者に等しく観察されました。

ホルモンレベルには変化なし

一方で、カディ氏が主張した、パワーポーズがストレスホルモン(コルチゾール)のレベルを低下させ、テストステロン(男性ホルモン)値を上昇させるという証拠は見つかりませんでした。

このことから研究チームは「パワーポーズによる自信の高まりは、生化学的なメカニズムが原因ではなく、純粋に心理学的な作用によるものではないか」と考えています。

それからチームは、先行研究の限界についても強調しました。

特に注意すべき点は、先行研究のほとんどが、西洋の先進国社会に住む中流家庭以上を対象にしていることです。

アフリカやアジアなどの文化圏は対象としていないため、パワーポーズがすべての人に等しく効果的であるとは断言できません。

それでも研究チームは、パワーポーズに多くの人の自信を高める効果があることを主張します。

「ヒーローポーズ」を取ると、実際自分への自信が高まる可能性がある!
(画像=重要な仕事が控えているとき、パワーポーズは自ら鼓舞するために役立つかもしれない / Credit:jp.depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

実際、背中を丸めてうなだれるよりも、大股で胸を張ると、少し気分が高揚するのを感じないでしょうか。

そのため、大事なプレゼン前や緊張しているときにパワーポーズを取ると、気を強く保てるかもしれません。

ただしパワーポーズは、自分の自信を高めるのとは別に、相手に対して支配的で、威圧感を与える効果もあります。

なので、人前でパワーポーズを取りすぎるのは控えたほうがいいでしょう。


参考文献

Does the ‘Superhero’ pose actually make people feel more confident?

Is there any psychological benefit to the superman pose?

元論文

Dominance and prestige: Meta-analytic review of experimentally induced body position effects on behavioral, self-report, and physiological dependent variables.


提供元・ナゾロジー

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