東京都は5月24日、都環境審議会で、2030年のカーボンハーフ実現に向けた政策の中間とりまとめをまとめた。

そこには新築住宅など中小規模の建築物に太陽光パネルを設置することを条例で義務化することが盛り込まれており、具体的には戸建て住宅を含む床面積2000㎡未満の中小建物を都内で年間2万㎡以上供給する大手住宅メーカー・ビルダー(約50社が該当)に対して、日照条件や建築主から設置拒否される場合などを配慮して、販売戸数の85%以上に太陽光パネルを設置することを義務付けるということである。

東京都の新築戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化で配慮すべきこと
(画像=Lari Bat/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

異論の数々

こうした動きについては5月半ばから報道されたため、様々な異論が噴出している。アゴラでも「小池都知事が新築住宅に太陽光パネル義務化で都民はますます住宅難に」で、建設費の高騰や廃棄物問題への懸念などが指摘されている。

またキヤノングローバル研究所の杉山大志氏は、そうした義務化により住宅購入者が負担する設置コストについて、都は国のFIT制度で10年間にわたり高額で余剰電力を売れる保証があるため、10年間でもとがとれるとするものの、結局は電気代に賦課されるFIT賦課金を通じて国民負担となる(150万円の設置コストのうち100万円は電気代上昇を通じて一般国民が負担することになる)ことを指摘している注1)。

さらに太陽光パネルは世界の生産シェアの約8割を中国が占めているが、そこで使われている多結晶シリコンの過半が新疆ウイグル自治区で生産されており、石炭火力による安価でCO2排出の大きな電力によって生産されている上に、強制労働による安価な労働力による人権上の問題も指摘されていいて、米国などでは人道配慮から輸入が規制されている。

国際金融都市としての地位を築きたい東京都であれば、都内の住宅の屋根に人権侵害が懸念されるパネルが大量設置される事態を避けるためにも、設置に際して人権侵害が懸念されるパネルの設置を禁止するなどのESG配慮も義務付けるべきだろう。