オーストリアのクレムス=ヴァハトベルク遺跡で、約3万年前にさかのぼる新生児の遺骨が新たに2体発見されました。

DNA分析の結果、2人は互いに全ゲノムが一致しており、考古学史上最古の「一卵性双生児」と判明しています。

オーストリア科学アカデミー、ウィーン大学による研究は、11月6日付けで『Communications Biology』に掲載されました。

目次
双子の近くに「3人目」も発見!
DNA分析で年齢が判明

双子の近くに「3人目」も発見!

クレムス=ヴァハトベルク遺跡は、旧石器時代の後期(約5万年前〜)に建造されたもので、3〜4万年前には狩猟採集民の滞在地にもなっていました。

双子の遺骨は、遺跡内に見つかった楕円型の墓穴に埋葬されており、ともに頭が北向きで、顔が東向きになるよう安置されています。

冥土の土産でもある「副葬品」も見つかっており、左側(冒頭画像)の乳児には、骨盤のあたりに象牙でつくられた首飾りのようなものが置かれていました。

ビーズ状の象牙が53個あり、すべてに穴が開いていたことから、ヒモで通していたようです。

約3万年前に亡くなった「一卵性双生児の遺骨」を発見! 考古学史上、最古の双子
(画像=象牙でつくられた装飾品 / Credit: Communications Biology、『ナゾロジー』より引用)

右側の乳児には、貝殻からなるネックレスとキツネの歯が複数見つかりました。

キツネの歯は装飾品のかたちを留めていませんが、何らかの飾りだったと思われます。

約3万年前に亡くなった「一卵性双生児の遺骨」を発見! 考古学史上、最古の双子
(画像=貝殻とキツネの歯 / Credit: Communications Biology、『ナゾロジー』より引用)

また、双子の埋葬地のすぐ近くに3人目の乳児の遺骨も見つかりました。調査では、双子の従兄弟と考えられています。

双子の墓は土で埋め戻されてはおらず、代わりにマンモスの肩甲骨を墓穴の形に整形して、フタのように閉じていました。しかし、それが遺骨の保存状態を高めていたようです。

その一方で、3人目の乳児は土で埋め直され、骨の状態も双子と比べて劣化していました。

DNA分析で年齢が判明

過去の考古学調査において、双子の遺骨が見つかった例はほとんどなく、さらにDNA分析での特定は今回が初めてです。

研究チームは、3人の性別と遺伝的関係性を明らかにするべく、頭蓋骨と歯のサンプルを採取し、DNA分析しました。

その結果、3人ともに男児であり、双子はまったく同じゲノムを共有し、3人目は双子と3親等の関係にあることが判明しています。

約3万年前に亡くなった「一卵性双生児の遺骨」を発見! 考古学史上、最古の双子
(画像=双子の遺骨 / Credit: Communications Biology、『ナゾロジー』より引用)

年齢は、歯の発達状態、およびエナメル質の基本構造である「エナメル小柱」の長さの測定で特定されています。

それによると、双子の右側は生後6〜7ヶ月で、左側は生後13〜14週間で、3人目の男児は生後3ヶ月で亡くなっていました。

3人とも妊娠満期で生まれていましたが、病気か食糧不足など、何らかの原因で命を落としたと見られます。

やはり3万年前ともなると、誕生後1年以内の死亡率は今よりはるかに高かったのでしょう。


参考文献

iflscience


提供元・ナゾロジー

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