第6章「嵐の恐怖」
この章では、米国におけるハリケーン(日本で言う「台風」)の発生状況と、竜巻の発生件数について述べている。
台風については、日本でも「温暖化の進行とともに『スーパー台風』が発生しやすくなる」としばしば述べられるが、実際には、気象庁データで明らかなように、過去に上陸した台風で最強は1961年、参考記録としては1934年で、10位以内に入るものの最近例は1993年、つまり、この約30年間は強さトップ10に入る台風は上陸していない。「スーパー台風」は、温暖化など騒がれていなかった時代にこそ襲ってきたのである。
米国でも同様で、1851〜2020年のハリケーン発生数は周期的に変動しながらほぼ横ばいである。その変動状況は、大西洋の海水温変動を示すAMO(大西洋数十年規模震動)と幾分かの相関を示しているように見える。そして、それらの観測データを分析した研究論文では、ハリケーンの頻度、強さ、降水量、高潮に関して自然変動以外の有意な傾向は見られないと明記されているにもかかわらず、政府機関の報告書には「危険な未来」が書かれていて、それをマスコミが強調するとも書かれている。
ハリケーン活動の指標である「勢力散逸指数」を見ても、1985〜2005年の間を取れば明確に増加傾向を示すが、1945〜2015年の間を取れば、そんな増加傾向は見られず、単に周期的な上下が観察されるだけである。ここでも、データの「見せ方」次第で印象は大きく異なる。
竜巻の発生数についても同様で、発生数データを一見すると増加傾向にあるように見えるが、実際には、昔は弱い竜巻はカウントしていなかったことが関係している。ある程度以上の強さの竜巻発生数で見ると、1954〜2014年でほぼ横ばい、強い竜巻に絞るとむしろ減少傾向が見られる。
このように、気象データについては、慎重に見定める必要があり、マスコミが得意とする印象操作に引っかかってはならないことを、本書は教えている。
(次回へ続く)
文・松田 智/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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