太陽系は私たちが考えるよりも、ずっと短い期間で素早く形成されていた可能性があります。
11月13日に科学雑誌『Science』にて発表された新たな研究では、太陽系は20万年という短期間で形成されたことが隕石の分析から明らかになったと報告しています。
これは太陽系を人間の一生に合わせて比較した場合、10カ月間と考えられていた妊娠期間が、12時間だったというのと同じくらいのとんでもない速度だといいます。
目次
想像よりずっと速い 太陽系の形成
太陽系でもっとも古い物質「高アルミニウムカルシウム含有物(CAI)」
想像よりずっと速い 太陽系の形成
はるか昔、およそ45億年前に太陽系は誕生しました。
そのころの太陽系は、太陽が主系列星というきちんとした恒星に成長する前の「原始星(前主系列星・Tタウリ型星)」を中心にして、多くの塵やガスが渦巻いている状態でした。
ここから星は進化して太陽となり、その周りのガスが少なくなって惑星が回る太陽系へと成長していったのです。
星系が形成される期間については、遠くの生まれたての星系などを観測することで、天文学者はおよそ100万年と推定していますが、太陽系がどの程度の時間で形成されたかについては、これまで明らかになっていはいませんでした。
しかし、この疑問について、今回の研究を発表したアメリカのローレンス・リバモア国立研究所(以下、LLNL)の科学者グループは、太陽系は約20万年で形成されたという結論を述べています。
20万年という時間を言われてもすぐにはピンと来ません。例えば地球上にホモ・サピエンスが登場してから現代までの期間が、およそ30万年と推定されています。
巨大な太陽系が、人類の祖先からの進化より短い期間で形成されていたと考えると、それは驚くべき速度だったと言えるでしょう。
太陽系でもっとも古い物質「高アルミニウムカルシウム含有物(CAI)」
太陽系でもっとも古い物質とされているのが「高アルミニウムカルシウム含有物(CAI:calcium-aluminum–rich inclusions)」と呼ばれるアルミニウムとカルシウムを豊富に含んだ白い物質です。
このためCAIは単一の物質のことではありません。原始太陽系の太陽近くで高温によって凝縮した鉱物の集合体です。これは原始惑星系円盤の中で形成され、太陽系のあちこちへ運ばれて炭素質コンドライト隕石(もしくはその母天体)へ降着していったと考えられています。
CAIは地球に落下した隕石から発見されています。メキシコのチワワ州で発見されたアエンデ隕石にもCAIは多く含まれており、これは45億6700万年前に形成されたとされています。
LLNLの研究チームは、このアエンデ隕石から採取したさまざまなCAIのモリブデン同位体組成というものを測定しました。モリブデン同位体の組成比を調べると、それぞれのCAIが太陽系のどこが起源なのかを知ることができます。
こうした調査を行った結果、見つかったCAIのモリブデン同位体の組成は、太陽系で見つかるすべての物質の組成をカバーしているとわかったのです。
つまりCAIという物質が、太陽系形成時のある一時期に、原始惑星円盤内で生まれたわけではなく、太陽系が形成される全ての期間を通して形成されていたと示されたのです。
このことからCAIが形成された期間を調べれば、それは太陽系が形成されるまでの期間と一致すると考えられます。
CAIが形成された期間は約4万年から20万年の間ということが分かっています。これはつまり太陽系の物質が構成され膠着するまでの期間は、およそ20万年程度だったということになるのです。
太陽系の形成が20万年未満という短期間で行われたことは驚くべき事実です。
このことについて、今回の論文の筆頭著者でありLLNLの研究者グレッグ・ブレネッカ博士は「人間の妊娠期間が10カ月と思っていたものが12時間だったようなものだ」とその発見の驚きについて述べています。
提供元・ナゾロジー
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