開発のベンチマークはホンダ N-BOXだと明言するほどライバルを研究し、追い越せる魅力を身につけようという意気込みで開発したのが、三菱eKスペース/eKクロススペースだ。デザインや走行性能はもちろん、かゆいところに手が届く細かな改良まで盛り込んできたので、早速試乗チェックしてみた。
 

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ホンダN-BOXをベンチマークに開発。「誰もが欲しくなるスーパーハイトワゴン」を目指す(画像=AUTO PROVEより引用)

ネガを取り去る完成度

最新の軽自動車に試乗すると、各社に共通したレベルアップを実感する。「ライバルはリッターカー」とか「軽自動車の概念を変える」など、大幅な性能アップを体験しているのだ。このeKスペース/eKクロススペースも同様に「驚くほどの進化」を感じるモデルだった。

試乗できたのはeKクロススペースで、販売割合でも65%がeKクロススペースを選択し35%がeKスペースだそう。個性的な顔立ちではあるものの、着実に人気を集めているといったところだ。

試乗車は4WDでターボを搭載。ラインアップは全てのモデルがマイルドハイブリッドを搭載し、NAハイブリッドとターボハイブリッドのパワートレーンにCVTを組み合わせている。駆動方式ではFFと4WDが選択できる。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

安定のダイナミック性能

これまでの軽自動車に対するネガなポイントは、安っぽさだと思うが、それはドア閉め音や唸るエンジン音、アクセルやブレーキペダルの頼りなさ、そしてインテイリアではコストダウンを狙ったかのようなダッシュボードやパネル類、スイッチ類の軽い操作感や侵入してくる音などが要因だったと思う。

そうしたネガなポイントが、ことごとく潰されていることに驚きを感じる。エクステリア、インテリアの質感アップを感じながら運転席に座り、走り出してみるとなお一層、驚く。

軽自動車独特のエンジン音が入ってこない、走行ノイズが小さい、ステアフィールの質感の良さといったものがどんどんインプットされてくる。市街地では静粛性の高さが際立ち、ステアフィールの良さに満足度が上がる。クルマ好きであればそのステアフィールだけでも高い価値を感じることと思う。
 

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リヤシートのスライド量はクラストップの320mmで大荷室容量を確保(画像=AUTO PROVEより引用)

そしてスーパーハイトワゴンの最大の魅力である、キャビンスペースの広さも嬉しさを底上げする。フロアから天井まで1400mmあり、子供であれば立ったまま移動できる高さがある。それだけの広さがあるとフロアからの音や振動といった点では不利なものだが、そうした音の侵入や振動がないことにも感心する。

スーパーハイトワゴンを運転していて、気になるのはふらつきだ。横風の影響を受けやすいことや、カーブでの重心の傾きなどでふらつきを感じ、安心感がなくなることだ。そうした点でもしっかりとした直進性やコーナリングをするので安心感が出てくる。

シャシーやボディ剛性といった構造の基本を磨き上げた証拠でもあり、ボディ剛性は誰もが感じるものだと思う。ふらつきは、ふらついて初めて気づくもので、普通に走行できていれば思い出すものでもない。ただ、経験的にふらつきを体験している人であれば、カーブを曲がる際、重心の傾きに対して身構えることがあるだろう。だが、eKクロススペースは何事もなく、コーナーを旋回していくのだ。ちなみに、ターボモデルにはパドルシフトが装備される。

充実の先進安全パッケージ

じつは、この三菱eKスペース/eKクロススペースは日産ルークスと兄弟車で、合弁会社のMNKVで開発されている。おもに日産が中心になって開発しているため、日産の「プロパイロット」という先進安全装置を装備しているが、この三菱eKシリーズにも「マイパイロット」としてメーカーオプションの設定をしている。

先進安全パッケージにおいて、便利だと感じたものと進化したものもお伝えしておこう。まずデジタルルームミラー。直接魅力を感じにくいかもしれないが、雨の日や夜間での駐車などでは、凄い威力を発揮する。360度アラウンドビューモニターと組み合わせると、真っ暗な場所でも障害物を認識しやすく、通常のミラーではバックランプで照らされた範囲しか見えないが、デジタルルームミラーなら、周辺が明るく映し出され、まるで昼間のように見え安心安全だ。

マイパイロットを稼働させている走行状況で、雨天でワイパーをハイスピードで動かすと以前はACCが解除されていたが、解除されなくなった。また、車線中央維持のレーンキープでも、ワイパーを使用すると解除されていたが、ハイスピードワイパー時のみ解除するように変更され、実用に見合った制御へと変更されている。

もちろん、渋滞時は停車までACCは稼働し、再スタートも自動で行なうので疲労軽減には大いに役立つ。また、先行車の追い越しでウインカーを出すと、設定速度内で加速をしながら車線変更ができるようになり、クルマの動きがスムースになっている。クルマの運転が上手な人が運転しているようなACCの制御はストレスがない。

標準装備されている機能では、先行車発進お知らせ機能や2台前のクルマの動きから、前方予測警報が安心材料だと感じた。そして、三菱の軽自動車としてはヒルディセント機能を初搭載している。これは急なスロープを下るような場合、しかも滑りやすい状況では威力を発揮する。ブレーキ、アクセルの操作は不要で、滑らず安全な速度にコントロールしながら下ることができるのだ。

個性的なデザインから三菱らしさへ

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助手席側にオートスライドドアを装備し、室内高は1400mmを確保(画像=AUTO PROVEより引用)

インテリアではやはり両側スライドドアが抜群にいい。助手席側Bピラーの下あたりに爪先を蹴り込むと電動のオートスライドドアがオープンする。両手に荷物や子供を抱き抱えているなどの状況ではありがたい。さらに、開口部が650mmあり、この広さも母親が子供を抱っこしたまま乗り込みやすいことを想定した幅だそうだ。

そうしたマーケットの声を反映しているのがリヤシートのスライドで、スライド量が320mmとクラストップのスライド量。ラゲッジスペース確保もそうだが、前方へ出した時に、運転席から体をひねれば容易にリヤシートに手が届くようにしたということだ。ベビーシートに座らせた子供を運転席から面倒を見ることができるという配慮だ。
 

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eKクロススペースの正面顔。三菱らしい顔になってきた!?(画像=AUTO PROVEより引用)

エクステリアではやはり個性的なフェイスだ。三菱のダイナミックシールドデザインをもとにデリカD:5から始まったニューフェイスデザインが盛り込まれている。初めてMCのデリカD:5を見たとき、縦型ヘッドライトやXをモチーフにしたデザインなどギョッとしたが、こうしてエクリプスクロスやRVR、ミラージュとフェスリフトが進むにつれ、印象が馴染んでくる。言い換えれば、三菱らしいデザインへと意識変化が起きているのかもしれない。
 

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バンパー下のスキッドプレートをシルバーに塗装しSUV風のルックスに(画像=AUTO PROVEより引用)

eKクロススペースはまた、サイドシルガーニッシュとホイールアーチをブラックにし、シルバーの前後バンパー下のスキッドプレートや、バンパーなどでSUVライクな力強さのあるデザインを採用している。こうしたデザイン処理も個性を際立たせている要因で、これまでの軽自動車に対する常識を覆すモデルになっていたのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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