新設備の開発において、CO2や省エネ問題への取り組みは避けて通れません。
夏の暑さや冬の寒さは室内に入る太陽光に大きく依存しているため、太陽光のコントロールは問題解決に寄与します。
ドイツ・カッセル大学テクニカルエレクトロニクス部門に所属するハートムット・ヒルマー氏ら研究チームは、建物内に入ってくる太陽光を調節するスマートガラスを発明。
スマートガラスの窓を利用するなら、季節に合わせた室温と自然照明の管理が可能になります。
研究の詳細は、1月26日付けの科学誌『Optical Microsystems』に掲載されました。
目次
無数のマイクロミラーが内蔵された「スマートガラス」
季節とユーザーの存在に合わせて太陽光を調整する
無数のマイクロミラーが内蔵された「スマートガラス」
新しいスマートガラスは断熱ガラスと「マイクロミラーアレイ」で構成されています。
マイクロミラーアレイは、肉眼では見えないほど小さなマイクロミラー数百万個で構成されており、電子制御システムによって作動。
各マイクロミラーは太陽光を反射するため、ミラーの傾きによってどれだけの太陽光を室内に入れるか調整できるのです。
マイクロミラーアレイは2枚の断熱ガラスの間に設置され、その隙間は貴ガスで満たされます。
これにより風や窓ガラス清掃など、あらゆる外的要因の影響を受けずに太陽光の調節が可能。
実際、冬には十分な太陽熱を取り入れ、夏には過熱を防ぎます。
また自然照明としての役割も担えるでしょう。
論文によると、このスマートガラスは建物が使用するエネルギーを最大35%節約し、CO2も最大30%削減できたとのこと。
季節とユーザーの存在に合わせて太陽光を調整する
新しいスマートガラスは地域や季節、時間帯に応じてスムーズな太陽光調節が可能です。
また、室内に設置したモーションセンサーと連動して、部屋の中にいるユーザーの人数や位置、動きに合わせた照明も提供できます。
例えば、夏にだれもいないときはすべてのマイクロミラーが垂直になり、太陽光をすべて外部に反射。
部屋にユーザーがいるときには、上部のマイクロミラーが斜めに開き、太陽光を天井に集めます。
これにより部屋の中は太陽の自然光で明るくなります。
室温の上昇を防ぎつつ、人工照明エネルギーも節約できるのです。
また冬にだれもいない場合は、すべてのマイクロミラーが開き、放射ヒーターとして室内を温めます。
ユーザーの存在が検知されたなら、すべての太陽光が天井に集められ、まぶしさを最小限に抑えてくれるでしょう。
今回の開発は「自然エネルギーを有効活用する」ことで課題に対処していました。
同様の方法は、さらに大きな環境・エネルギー問題も解決するかもしれませんね。
参考文献
Smart Glass Has a Bright Future: Daylight Steering Provide Huge Energy Savings
元論文
MOEMS micromirror arrays in smart windows for daylight steering
提供元・ナゾロジー
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