太陽系には、冥王星のはるか外側を回る未知の惑星「プラネット・ナイン」が存在しているという説があります。

未だにその正体は不明ですが、このプラネット・ナインと性質がそっくりな惑星が他星系で発見されました

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、12月10日に天文学の科学雑誌『Astronomical Journal』で発表した新しい研究では、地球から336光年離れた二重連星系の惑星「HD 106906 b」は予想されるプラネット・ナインそっくりの軌道を回っていると報告しています。

これは未だ発見できないプラネット・ナインの形成を理解する手がかりになるかもしれません。

目次

  1. 遠い星系の「プラネット・ナイン」
  2. 主星から遠く離れた惑星
  3. 「HD 106906 b」はどうやって形成されたのか?

遠い星系の「プラネット・ナイン」

未知の惑星「プラネット・ナイン」にそっくりな系外惑星を発見! 太陽系内での発見の手がかりになる可能性
(画像=プラネット・ナインのイメージイラスト。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

「プラネット・ナイン」とは、準惑星冥王星のはるか外側にあると考えられている太陽系の9番目の惑星のことです。

まだその姿は見つかっていませんが、太陽系外縁を回る小惑星が受けている重力的な影響を考えた場合、地球の10倍近い質量を持った巨大な惑星が、太陽から平均約700AU(天文単位)の距離を回っていると考えられているのです。

未知の惑星「プラネット・ナイン」にそっくりな系外惑星を発見! 太陽系内での発見の手がかりになる可能性
(画像=プラネット・ナインの軌道(赤の破線)を示すGIF画像。太陽から非常に遠い惑星であることが分かる。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

本当にそんな惑星が存在するのか? あるとしたらどうやって形成されたのか? そうした疑問は長く議論されています。

そんな中、別の星系でこのプラネット・ナインによく似た惑星が見つかったのです。

それが太陽から336光年離れた二重連星系に属する太陽系外惑星「HD 106906 b」でした。

この惑星は2013年にチリのアタカマ砂漠にあるラス・カンパナス天文台で発見されました。質量は木星の11倍もあり、その位置は主星の連星から730AU、すなわち地球と太陽の距離の730倍以上も離れていたのです。

発見当時、この惑星がどんな軌道を回っているのかはさっぱり不明でした。

しかし、ハッブル宇宙望遠鏡がこの惑星を辛抱強く観測し、その軌道を特定したのです。

それは太陽系のプラネット・ナインで予想されている軌道とよく似たものでした。

主星から遠く離れた惑星

未知の惑星「プラネット・ナイン」にそっくりな系外惑星を発見! 太陽系内での発見の手がかりになる可能性
(画像=ハッブル宇宙望遠鏡の画像を元にした系外惑星HD 106906 bの軌道(楕円の破線)。背景の輝きは別の遠い星の光。 / Credits: NASA, ESA, M. Nguyen (University of California, Berkeley), R. De Rosa (European Southern Observatory), and P. Kalas (University of California, Berkeley and SETI Institute)、『ナゾロジー』より 引用)

この画像はハッブル宇宙望遠鏡による観測画像で、問題のプラネット・ナインに似た系外惑星の軌道は楕円の破線で示されています。

画像の左下に比較のために500AUの距離を示す線と、海王星の軌道を描いた丸が記載されています。

現在太陽系の一番外側を回っている海王星の軌道直径は、平均約30AUとされているので、この「HD 106906 b」という惑星を太陽系に置いて比較した場合、海王星の24倍も太陽から離れているということになります。

あまりに主星から離れているため、この惑星は軌道を一周するのに1万5千年かかるとされていて、ハッブル宇宙望遠鏡の精密な観測でも、その軌道を僅かな時間で特定するのは大変な作業だったようです。

また、興味深いことにこの連星系わずか1500万年歳という若い星系だと分かっています。

これは太陽系の46億歳という年齢と比較して考えた場合、プラネット・ナインのような惑星は、非常に初期の段階で形成される可能性があることを示しています。

太陽系では海王星軌道のさらに外側に、エッジワース・カイパーベルトと呼ばれる小天体の集まったデブリの円盤が存在しています。

未知の惑星「プラネット・ナイン」にそっくりな系外惑星を発見! 太陽系内での発見の手がかりになる可能性
(画像=エッジワース・カイパーベルトのイメージイラスト。 / Credit:国立天文台、『ナゾロジー』より 引用)

今回の連星系にも、似たようなデブリ円盤が確認されていますが、それは片側が潰れた非対称な形になっています。またその潰れた軌道では垂直方向にも小天体がバラけてしまっているそうです。

これは「HD 106906 b」の重力的な影響によるものだと考えられています。

「HD 106906 b」はどうやって形成されたのか?

未知の惑星「プラネット・ナイン」にそっくりな系外惑星を発見! 太陽系内での発見の手がかりになる可能性
(画像=プラネット・ナインは太陽系に存在するのか? / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

いずれにしろ、疑問となるのは海王星をはるかに超える遠い軌道に、なぜ巨大な惑星が存在することになったのか? ということです。

今回の「HD 106906 b」については、主星から3AUという、現在より非常に主星に近い距離で惑星が形成されたと考えられています。

しかし、その惑星はガス円盤内で徐々に位置がずれていき、軌道が崩壊しました。そして、連星に向かって内側へ引っ張り込まれ、その勢いのまま、今度は外側へはじき出されてしまったのです。

その後、惑星は星間を移動する通過星の影響で、星系を飛び出さずに遠い外縁部で軌道を安定させたと考えられるのです。

この影響を与えたと考えられる通過星の候補は、ESA(欧州宇宙機関)の調査衛星ガイアによって特定されています。

研究チームの1人、欧州南天天文台の研究者ロバート・デ・ローザ氏は、潰れたデブリ円盤とともにこの惑星軌道の形成理由について研究を続けていますが、「これは潰れた自動車を見て、そこでどんな事故が起こったか再構築しているようなものです」とその難しさを語っています。

しかし、太陽系のプラネット・ナインについても、もともとは太陽系の内側の軌道で形成された惑星が、太陽と木星の重力的な影響で外側へはじき出されたと予想されており、それが通過星の影響で遠い軌道に安定した可能性は高いと考えられます。

今回の発見は、太陽系の未知の惑星プラネット・ナインを理解するための手がかりになるかもしれないのです。

ただプラネット・ナインには、他に候補があり、実際は惑星ではなく、小天体の偏りで作られたクラスタ(集団)ではないかとも言われています。

未だその正体は謎のままです。

参考文献
NASA

提供元・ナゾロジー

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