3. 奇妙な女性労働者の給与水準
それでは、女性の労働者の平均給与はどうでしょうか?
図5が女性の年齢階層別平均給与です。
縦軸を男性のグラフのスケールと合わせている関係もありますが、年齢階層別での差がほとんどないのが特徴的です。
男性のグラフ(図3)は年齢階層が上がるごとに、平均給与も上昇しています。一方、女性のグラフはほとんど給与が変わりません。そして男性と比べると、全体的にかなり低い水準です。
年齢が上がるほど、賃金が上昇するフルタイム労働者が減り、賃金がほとんど変わらないパートタイム労働者が増えるなどの要因があるかもしれません。
このあたりについては、今後もう少し深堀りしてみたいと思います。
平均給与 女性
1997年→2020年 単位:万円
合 計: 278.9 → 292.6 (+13.7)
20代: 286.2 → 287.8 (+ 1.6)
30代: 299.2 → 310.1 (+10.9)
40代: 279.7 → 319.0 (+39.2)
50代: 278.7 → 314.9 (+36.3)
女性の場合は、少しずつ平均給与の上昇が見られ、1997年の水準と比べると、特に40代、50代で増加幅が大きいようです。
図6が女性の年齢階層別に1997年の水準を基準(1.0)とした時の成長率のグラフです。
男性と異なり、リーマンショックでの大きな落ち込みはなく、リーマンショック後の上昇傾向によって、プラス成長となっています。
4. 転落していく日本人の給与水準
今回は日本の労働者について、男女別、年齢階層別の平均給与についてフォーカスしてみました。
男性労働者は年齢関係なく平均給与が下がっているという事実と、女性は若干平均給与は上がっているながらも男性と比べると極めて低い水準である事が改めて確認できました。
そもそも、先進国で平均給与所得がマイナス成長しているのは日本だけです。
図7は2000年を基準(1.0)とした平均所得の推移ですが、マイナス成長しているのは日本だけで、他国は軒並みプラス成長です。
その結果、1990年代に先進国で3番目の高水準だったのが、直近では下位グループにまで転落してしまっています。
図8が平均所得(名目)のドル換算値を大きい国順に並べたグラフです。
日本は4万ドル強で36か国中20番目の水準で、既に先進国で下位グループに属します。OECDの平均値も下回ります。
現在は20位という順位ですが、このまま平均所得の停滞が続けば、今後更に順位を下げていく事は想像に難くないですね。
働く人の賃金が上がっていく社会への変化が必要だと思います。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。
文・小川製作所/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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