丸山達也島根県知事が「バカでもわかる」と発言し話題になっている。

政府が進めているインバウンドや屋外でのマスク着用の緩和などの動きについて丸山知事は・・・

丸山知事:「インフルエンザや風邪とは違うという証拠が、沖縄の今の実態。バカでもわかる事実だ。」

(「日本海テレビ」2022.05.13から引用)

私は丸山知事よりバカではないと思っているし、今の沖縄の実態を見ても丸山知事の分析は間違っていると思う。私は丸山知事のことを相当なバカだと認識しているのだが、客観的にはどう見えるのだろうか。

丸山知事は東大卒で元自治官僚。自治省(総務省)から島根県に出向経験があり、その後島根県知事になったという経歴を持つ。

あれ、私の1学年上。大学内で一回位すれ違ったことがあるかも(苦笑)。

今の県知事はほとんどが東大卒元中央官僚で、丸山知事のような経歴は県知事としてはごく普通である。

多分、丸山知事は県内にいる人間の中で自分が一番頭がいいと自認していて、それが発言に出てしまったんだと私は思った。

根が深い東大卒元官僚知事の「バカでもわかる」発言
(画像=graffoto8/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

ここに今の地方社会が抱える大きな問題がある。今の地方には、優秀な人材が残っていないのだ。優秀な人はみんな都会に出ていってしまう。

私も地元に帰ってもう20年近くになるが、とにかくまわりに気の利く人がいない。話をしていて面白いと思える人が皆無なのだ。それではつまらないから、学会等に頻繁に顔を出し、全国の大学の先生たちと話をすることで気晴らしにしてきた。

そういう地方の中でも優秀な人材が集まっているのが県庁である。県職員とは比較的話が通じることが多い。それなりの能力を持っている人がその能力を活かせるのが県庁しかないというのが、今の多くの地方の現実である。

県職員と話をする時に気に障るのが、相手を見下したような態度を取る人が多いことだ。多分、特権意識を持っていたりすることが理由ではなく、単に日常話の通じない県民を相手にすることに慣れてしまっていて、そういう態度を取ることが染みついているような印象を持っている。

これが私の経歴を事前に知っている場合だと、180度態度が変わるのが面白い。この時も、相手の能力を考えてへりくだった態度を取っているのではなく、単純に自分より知識のある人からは教えを請いたいという、自然な感情から出てきていると感じる。

地方の中では優秀な県職員ではあるが、それでも中央官僚から見ると頼りなく見えるようだ。地方分権などの話題で知人のキャリア官僚と話をすると、「地方には任せられない」と必ず言われる。この官僚たちが地方の実態を知らずに言っているのではない。中央と地方の人事交流は盛んに行われており、地方への出向経験のある中央官僚がみな「地方には任せられない」と言うのである。これが今の日本の実態なのだ。

こういう中央官僚が知事になると、普段どう感じているのだろうか。多分、まわりの人はバカばっかりだ、という感覚になっていておかしくない。というか、まずなっている。それを口に出すかどうか、は知事個人の性格によるのだろうと、私は思っている。

丸山知事の発言を批判するのもいいが、それ以上に今の地方に人材を送り込むシステムを真剣に考えていきたい。

文・前田 陽次郎/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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