利害関係者だけが声を上げる

イーロン・マスクさんをはじめ人口減少警鐘論者に言いたいのは皆、ポジショントークではないのかいう疑問だ。

そもそも、私たちが生きていて、我々は何人の人と出会うのだろう? 数えたことはありますか? 1億人と知り合いですか? その人数が何かにおいて重要だったことがあったのだろうか?

人口など、政治家や経営者というエリート層の机上の統計上のお話にしか過ぎない。しかも、「国民」というよくわからない概念である。歩いていて町であった人が「国民」というラベルが張られていないわけだから、目の前の人が何人か、そのうち国民が何人か、というのは普段の生活にとってはそんなに大事なことではない。国籍にとらわれず、国際社会・グローバル社会で生きていけば、考える必要もない数字なのだ。

結局、人口減少に危機感を感じている多くの人は、ポジショントークであろう。意見と立場を見てみよう。

人口減少で何が悪い?:イーロン・マスクが言う日本消滅はない!
(画像=【出典】筆者作成、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

赤色のカッコが警戒論、黄色のカッコが擁護論というところか。

政治関係者や行政関係者は、人口をもとに仕事が成り立っているから人口減少に危機感を感じるのは当然だろう。人口の右肩上がり前提が覆ると、昭和以来の既存のシステムが成り立たない、仕事がやりにくいという結論にしか過ぎない。「失われた30年」という経済停滞において、「月給で手取り100万円未満であるような議員を多少増やしたって罰は当たらない」という政治家さんが厚かましくも権力の座についている人たちに言われたくないというのが国民の本音だろう。

経済人も一部の人たちだけであろう。経営者なら、国民の数より、大事なのは潜在市場の人口数。対象となる市場を拡大して考えればいいだけなのだ。日本の「規制」のもとでのビジネスしか考えていない経営者だから、「問題」と言えるのだろう。

持続可能な国づくりが大事

個人的には人口減少でいいじゃないか、と思っている。幸福度も低く、自殺数が多く、「友達以外は皆風景」で、「空気」の支配が隅々まで行き渡り、言いたいことも言えない、マスクですら同調圧力で外せない、個人の尊厳すら尊重されているのか、怪しい社会。ツイッターでしか本音を言えない息苦しい社会。しかし、未来は、ロボットもいるし、先端技術で会話ができる動物かもしれない。メタバースもある!

地球環境問題と同様だが、先進国がこれ以上人口を増やしてどうするのだという問題意識を持ってほしい。世界の資源を食い尽くし、発展途上国に成長抑制を強制できない中で、これ以上地球全体の持続可能性に悪影響を与えてどうするのか。資本主義経済がもたらす恵みは素晴らしいが、日本が目指すのは、持続可能な社会モデル、真のSDGsモデルを世界に発信することであろう。

一時的には日本経済は停滞するかもしれないが、どのみち、成熟経済のもとでは、他の国も同じ事態を迎えることになる。火星に行くビジネスを推進している人が望む「破壊された地球」を期待している人はいないはずだ。先史以来、近代は別として、特にこの日本列島は、特に江戸時代、人間が自然と共生してきたことを思い返すべきだろう。

文・西村 健/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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