コストコ会員は他の会員が何を買っているかを知りたがる
コストココネクションを読むことで「よりコストコ沼にはまる」というカスタマーストーリーを描くのは、あながち過大な期待ではない。なぜなら、「コストコ会員は他の会員が何を買っているのかを知りたがる傾向がある」(担当者)からだ。コストコを訪れた人がSNSに投稿した「購入したもの」「オススメの品」を、熱心に情報収集して回るコストコファンは多く存在する。つまり、会員の多くが「まだ自分の知らない良い商品がある」「コストコにはもっと奥がある」と感じているのだ。
その“奥”を知ってもらうために、非食品を全面的に紹介する号(2017年秋号)を制作したこともある。2018年冬号では、コストコの持つさまざまな価値を切り口として商品を紹介する「コストコバリューとはなにか」という特集を組んだ。
最近では、「あなたの好きなシーフードは?」「あなたの好きなワインは?」などのアンケートに答えてもらい、翌号以降で結果を発表する「Member POLL」というコーナーを設けている。これも、コストコが顧客のし好をリサーチするというより、他の会員が何を好んでいるかを知りたい顧客の欲求にこたえるものだといえそうだ。
カギは“特別感” コストコの巧みなブランド戦略
コストコホールセールジャパン 日本支社長のケン・テリオ氏は、21年10月に小誌が行ったインタビューに対し、「ここ1年半の会員数の伸長率は、コロナ以前と比較してさらに高まっている」と述べている。これは、商品を大容量で提供するコストコのコンセプトがコロナ禍でのまとめ買い需要の高まりにフィットしたという側面もあるが、映画館にも遊園地にも行けないコロナ禍での閉塞感が「ワクワク感のあるコストコ」に消費者を誘ったとも言える。事実、同インタビューでテリオ支社長は「来店頻度も約2週間に1回と増加傾向にある」と述べている。これはコストコが消費者のまとめ買い需要だけではなく、エンタメとしての需要にも応えたからではないか。
ただし、その前提にはコストコの巧みなブランディング戦略がある。そもそもが「会員でなければ原則入店することができない」という特別感に加え、会員にもランクが存在する。ビジネスメンバー(法人会員:年会費4235円)とゴールドスターメンバー(個人会員:年会費4840円)の2種類が基本となり、それぞれ上位のエグゼクティブ会員(年会費9,900円)にアップグレードすることができる。エグゼクティブ会員はより割引特典などが多いが、特典の差に加えて消費者の特別感をより引き出す効果もありそうだ。
「誰でも買物ができるわけではない」というコストコの特別感と、コストココネクションの「誰でも貰えるわけではない」という特別感には共通しているものがある。あえて門戸を制限することで消費者の特別感や購買意欲を高め、ブランドに触れること自体をエンタメに昇華させるコストコの戦略には学びが多そうだ。
提供元・DCSオンライン
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