今回は、2月に引き続き今年二つ目の新作を紹介させていただきたい。その名は“セコンドセッティング”。アンティーク時計の愛好家であればこの名称をご存じの方も多いだろう。秒単位まで細かく計測するべく1929年にパイロット向け腕時計として製品化された通称“ウィームス・セコンドセッティングウオッチ”と呼ばれる航空時計から着想を得て再現したものである。
セコンドセッティングウオッチとは、航空航法の第1人者であったアメリカ海軍のP.V.Hウィームス大佐が考案したことからこう呼ばれるようになったもので、 “ウィームスウオッチ”とも呼ばれる。
当時は戦術的にも航空機が存在感を示し始めた時代。時速数百キロメートルで飛行する航空機では、1秒の違いで距離に大きな誤差が生じてしまうために、秒単位まで正確に計測する必要性に迫られていた。そこでウィームス大佐は「秒針で調整するのではなく、秒目盛り自体を動かす」という逆転の発想から航空士のための計時方法を考案。それを時計メーカーのロンジンが腕時計として開発したことで誕生した。つまりこれが“セコンドセッティング”という愛称の由来となったのだろう。
開発当初は秒目盛りが付いた文字盤中央部のディスクが回転する仕様だったが、今回製品化した第2世代は60秒表示目盛りが付いた双方向回転ベゼルと、計測時にその回転ベゼルが動いてしまうのを防ぐためのロック機構を4時位置に装備し、それを操作するための大きめのボタンと時刻調整などを行う通常リューズの二つを備えている点が大きな特徴だ。
使い方はいたって単純。ベゼル上の“60”の目盛り位置を計測開始時の分針の位置にセットするというもので、分針と秒針とが指し示すベゼル上の目盛りから何分何秒経過したのかを細かく確認することができるというものだ。40年代といえばまだダイバーズウオッチも開発されていない時代。おそらく当時としては画期的だったに違いない。
このセコンドセッティングウオッチは、ロンジンのほかにオメガ、ゼニス、ジャガー・ルクルトなど複数のメーカーが製造した。そのためベゼルのロック機構の仕組みはメーカーによって微妙に違った。今回の新作は1940年代のロンジンでイギリス軍に納入されたと言われている個体の機構に倣い、左右2カ所の出っ張りがベゼルの刻みと噛み合う、堅牢に作られたタイプのものを再現した。
ラインナップにはブラックとブルーグラデーションの文字盤カラーを用意。加えてベゼルの目盛りもブラック文字盤は10秒ごと、ブルーグラデーション文字盤は5秒刻みで数字を配置するなど微妙に変えているため、全体の雰囲気もだいぶ違う。
搭載するムーヴメントはシチズン傘下のミヨタ製自動巻きムーヴメント。そのなかでも最上位となるハイビート機の9000番台。そして最も薄型のCal.9039を採用し、ケースサイズを38mm径、ケース厚は12.7mmと着けやすいサイズ感を実現した。
なお、正式発売は7月中旬を予定。現在それに先立って実施しているクラウドファンディング「ウオッチメーカーズ」では数量限定ながらも何と早割で税抜き3万円台(各色限定15本)とかなりお買い得な特別価格となっている。ぜひこのチャンスをお見逃しなく!
ウオッチメーカーズ
提供元・Watch LIFE NEWS
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