アメリカ東部・バージニア州で現在、同国で最も危険な有毒ケムシが大量発生し、住民の被害が相次いでいます。
ケムシは「サザン・フランネル・モス」という蛾の幼虫であり、哺乳動物のようなモコモコした体毛が特徴です。
しかし、体毛はすべて猛毒の針であり、皮膚に刺さると激痛が走って、腫れや発熱、嘔吐、ショック症状を引き起こします。
州当局は、ケムシを見つけたら絶対に触らないよう注意を喚起しています。
例年とは違う場所で被害が続出
サザン・フランネル・モスは、アメリカ南東部とメキシコに生息し、普段はニレやオーク、スズカケノキなどの樹木に隠れて暮らしています。
ところがバージニア州では最近、公園や住宅地での目撃情報が相次ぎ、例年では見られない場所での被害が多発しているのです。
特に、同州東部に被害が集中しており、救急搬送された人もいますが、まだ正確な繁殖位置の特定はできていません。
ケムシのサイズは、およそ3〜3.5センチと小さく、体は毛皮のコートに包まれて見えません。金髪のカツラと見間違えてしまうかもしれませんね。
またネコの毛のように、ふさふさした見た目から「プス・キャタピラー(ネコ毛虫)」とも呼ばれています。
成虫の蛾になれば毒もなくなり、まったく無害なのですが、ケムシの時期は最も危険です。それは体の弱いケムシにとっても同じことで、だからこそ全身を猛毒の毛皮で守っています。
応急処置は”セロハンテープ”が有効
実際に被害にあったバージニアの州都・リッチモンド在住の女性(55)は、取材に対し「車の後部座席に手の伸ばした瞬間に、皮膚を焼けたナイフで刺されたような痛みが走った」と話します。
女性はその後、緊急治療室に運ばれ、病状が回復するまでに3日を要したそうです。
バージニア工科大学の昆虫学者エリック・デイ氏は「ケムシの個体数は一般に、自然下の天敵によってバランスが保たれますが、今年は様子が違う」と指摘します。
また「柔らかそうな見た目から子どもが誤って手を触れてしまう可能性が高いので保護者の監督が必要になる」と注意を促しているとのこと。
万が一、刺された場合は、すぐに患部を洗い、セロハンテープなどの粘着物を使って、皮膚に付着した毒針や毒素を除去するのが有効だそうです。
日本には生息していないので一安心ですが、ケムシの異常発生には気候変動などが関係しているのかもしれません。
サザン・フランネル・モスが動く様子を上の動画でみることができます。このケムシともソーシャルディスタンスを取ったほうが良さそうですね。
参考文献
bigworldtale
提供元・ナゾロジー
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