毎年6月頃になると、数週間だけホタルの発光現象が見られます。

数千匹のホタルがいっせいに光を放つのですが、ほとんどはオスで、メスへのアピール目的があります。

面白いのは、発光リズムがバラバラではなく、群れでシンクロすることです。

ホタルが打ち合わせなしでどうしてシンクロできるのか、大きな疑問となっていました。

しかし今回、米・コロラド大学ボルダー校の最新研究により、その謎の解明に一歩近づいています。

9月23日付けで『Journal of the Royal Society Interface』に掲載された報告によると、発光リズムの同調は、本能ではなく社会的な理由から起こっていたとのことです。

目次

  1. ホタルの発光には決まったパターンがあった
  2. 発光同調は”社会的なもの”だった

ホタルの発光には決まったパターンがあった

研究主任のラファエル・サルファティ氏は「ホタルの同調性は本能的なものか、それとも環境に基づくものか」という問題に焦点を当てて、調査を開始しました。

同氏と研究チームは昨年6月、テネシー州にある「グレートスモーキー山脈国立公園」にて、2台の360度カメラを用いてホタルの発光現象を撮影しました。

撮影は日没の30分後から1日90分行われています。

なぜ「ホタルは発光のリズムをシンクロさせる」のか? 本能ではなく社会的な意味が隠されていたと判明
(画像=撮影地点、赤く点滅するのがカメラ / Credit: royalsocietypublishing、『ナゾロジー』より引用)

映像を分析すると、あるパターンが発見されました。

ホタルの群れは、発光同調を数回したあと、数秒間の無点滅状態を続け、再び発光し始めたのです。このサイクルが延々と繰り返されます。

群れの位置は、地面から2メートル以内の高さにとどまっており、群れの形は地面の形状に合わせて配置されていました。これは地面近くにいるメスに見えやすいようにするためと思われます。

こちらが撮影された映像です。

群れの光は、誰かが発光するとそれが波のように周りに伝播しています。

発光同調は”社会的なもの”だった

さらに、群れの中から数匹だけ隔離してみると、彼らの発光リズムは同調せず、バラバラでした。ところが面白いことに、隔離したホタルの数を増やすと変化が起きています。

15匹の時点ではまだバラバラでしたが、20匹を超えると、再び発光リズムがシンクロし始めたのです。そのパターンは群れのものと同じでした。

サルファティ氏は「これは発光の同調性が先天的なものではなく、周囲の状況に依存した社会的なものであることを示す」と述べます。

群れの発光が波のように伝播するのもそのためでしょう。

なぜ「ホタルは発光のリズムをシンクロさせる」のか? 本能ではなく社会的な意味が隠されていたと判明
(画像=隔離用のテント / Credit: royalsocietypublishing、『ナゾロジー』より引用)

他方で、ホタルが発光リズムを同調する理由は分かっていません。

一説では、発光リズムを合わせることで、無点滅の間にオスの発光に反応したメスのかすかな光を見つけるためと言われます。

例えるなら、ロックバンドがお客さんに呼びかけてそれに応答する「コール・アンド・レスポンス」のようなものでしょう。

サルファティ氏は「発光の仕組みを理解することは、同調の理由だけでなく、種の保護にも役立つ可能性がある」と話しました。

参考文献
sciencealert

提供元・ナゾロジー

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