絵に描いた餅にならないのか?経済安全保障推進法

本件NHKのウェブが面白いです。「覚えていますでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大直後にマスクが店頭から消えたことを。覚えていますでしょうか。去年の冬、半導体不足が原因で給湯器が品切れになったことを」と。なるほど、国家の安全基盤は自前でしっかり確保しましょう、というのです。だけど、あの中学生向けのようなサイズのアベノマスクは日本製ではないですよね。半導体投資はリスクがあると日経が昔、散々書き立て、企業は怯え、萎えました。「そんな英断、サラリーマン社長の僕にはできましぇーん」と。

私は国の大方針と企業には極めて大きな温度差がある分野が多いと感じています。そして企業側も「よし、2030年を見据えて」と挑んでも海外の水準に足元にも及ばないことだらけです。例えば今回の4本柱の一つ、「官民で先端技術の研究促進」とありますが、富士通はバンクーバーに同社の知能を移管しAIに全力で取り込むと言ったのに2-3年後にはほうほうの体で主力が引き上げました。コロナのワクチンも厚労省と製薬会社の長年のぬるま湯関係の中で緊急時の対応は3周遅れでした。「非公開特許の制度導入」と言っても日本はスパイ天国で日本人技術者や学者は英語でいうBrain Drain (頭脳流出)であってそれを食い止める餌(=報酬)はありません。

今、優秀な人材は省庁に入りません。ということは国家の基盤を支える省庁の実務部隊はどんどん高齢化しているともいえます。なぜ、国家を支えるエリートは育たないのか、一つには国会議員との関係もありそうです。この両者の関係はどう見ても議員が上で「官僚は俺にもっとわかりやすく説明しろ。俺は忙しいんだ」という姿勢です。野党議員の官僚への噛みつき方も結構厳しいようです。ある中堅役人氏の嘆きは「高齢の先生方は本当に理解していただくのが難しい」と。今回の経済安保も議員が議員のために作った法律であって地に足がついておらず、実務を担った役人氏もその影響を受ける企業側も何か異次元のものを見ているような様相ではないでしょうか?

後記
私が会長を務めるNPOは他のコミュニティとの連携を今年の大方針で進めています。今週、韓国系ビジネス団体と初会合を行いました。関係が定着すれば非常に重みがあるきっかけになります。会合で思ったのは規模の違い。先方は当方の6-7倍の会員数と資金力。少し前に台湾系団体とも会合を持ちましたが、こちらも同様。でも共通点は中国本土の影響力の太刀打ちするには日台韓が一体にならざるを得ないという結論でした。政治的影響力を考えると日本独自ではもう無理。これは好む好まざるにかかわらず実務として直面している事態だということ、あらためて感じました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月14日の記事より転載させていただきました。

文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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