ネットショッピングの商品ページには、その商品に対するレビューが溢れています。

中には、適当にコメントしたものや、過度に肯定的または否定的な評価も存在します。

そのため私たちは正しい判断を下すため、「商品について本当に知っている人のレビュー」を探すことでしょう。

しかし今後は、まるで専門家のようなレビューでさえ、「AIが書いたかもしれない」と疑わなければいけません。

アメリカ・ダートマス大学(Dartmouth College)コンピュータサイエンス学部に所属するキース・カールソン氏ら研究チームが、人間と区別できないレベルの商品レビューを生成するAIを開発したのです。

今回、レビューAIはワインとビールのレビューを学習し、まるでソムリエのようなレビューを生成しました。

研究の詳細は、2022年2月12日付の学術誌『International Journal of Research in Marketing』に掲載されています。

目次

  1. プロレベルのワインレビューを書ける「レビューAI」

プロレベルのワインレビューを書ける「レビューAI」

文章を生成するAI自体は、以前から存在してきました。

しかしAIが書いた文章はたどたどしく、簡単に見分けられます。

特に専門家のような「分かっている人」が書いたレビューと比べると、使用されている単語や表現から、その違いが明らかです。

人間と区別できないレベルの「商品レビューを生成するAI」が登場!
(画像=商品レビューを書けるAI / Credit:Depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

ところが新しく開発されたレビューAIは、既存のレビューを学習し、まるで人間のような「分かっている」レビューを作ることが可能です。

今回の実験では、レビューの対象としてワインやビールが選ばれました。

最初にチームは、10年分のワイン雑誌からソムリエのレビュー12万5000件を抽出。

これらでAIを訓練し、栽培地域、品種、発酵方法、製造年、味や香りの表現など、専門家たちの文章スタイルを学習させました。

また同様に、ビールを扱ったWebサイトの約14万3000件のレビューを利用して、AIを学習させました。

次にチームは、訓練されたAIの性能を検証するため、300種類のワインと69種類のビールについて、AIに商品レビューを生成させました。

そして同じ商品について人間が書いたレビューも用意。

それぞれのレビューを実験の参加者に読んでもらったところ、ほとんどのケースで、AIのレビューと人間のレビューを見分けることができませんでした。

人間と区別できないレベルの「商品レビューを生成するAI」が登場!
(画像=新しいAIは、まるでソムリエが考えたようなレビューを生成した / Credit:Depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

実際、AIは次のようなレビューを生成しました。

「香りは少し閉じているが、ホワイトグレープフルーツとタンジェリン(ポンカンの仲間)の豊潤な香りが特徴的です。また凝縮感は控えめですが、後口にレモンライムの酸味が残ることで、きれいにバランスが取れています」

訓練されたAIは、まるでソムリエのようなレビューで人々を騙すことができたのです。

もちろん、AIがレビューを生成できるのは、既に人間によって多くのレビューが書かれている商品に限ります。

さて研究チームは、「このAIは、レビューを書く専門家に取って代わるものではなく、自社の商品説明を書く能力や時間がない経営者をサポートするもの」としています。

しかし悪用は簡単でしょう。

レビューAIは応用するなら、自社の商品を絶賛する本格的なレビューをいくらでも投稿できるはずです。

もしかしたら将来、専門家と見分けがつかないAIレビューの氾濫によって、商品の評価システムは完全に崩壊するかもしれません。


参考文献

Step aside sommeliers, this AI is writing reviews

AI Sommelier Generates Wine Reviews without Ever Opening a Bottle

元論文

Complementing human effort in online reviews: A deep learning approach to automatic content generation and review synthesis


提供元・ナゾロジー

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