【木村ヒデノリのTech Magic #082】 80年代生まれの男子にとってガンプラは外せない存在だ。当時はSDガンダムからBB戦士など、プラモデル全盛期だった。筆者の同級生には保存用と組み立て用の毎回2個を購入するような猛者もいたくらいだが、安価に買えるプラモデルが男子の間で流行していたのは事実だ。そんなガンプラが今再びブームになっている。当時と違うのはプラモデルそのもののクオリティと工具の進化で、作り方の情報量が圧倒的に多いのもユーザーの興味を掻き立てている。今でもプラモ製作を続けている方には当たり前かもしれないが、最近まで業界を離れていた筆者が驚いた進化の数々を紹介したい。
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(写真は洗浄なしで瓶ごと保管もできる
新しいコンセプトのエアブラシ「SPARMAX Flyer」)、『BCN+R』より 引用)
まずは情報量が違う! 昔作っていた人は始めたら楽しいタイミング
ガンプラが流行っていた当時は情報も少なく、子供だったらコロコロコミックやコミックボンボン、大人でも専門雑誌を見るくらいしか他人がどう組み立てているかを知る手立てがなかった。それが現在ではYouTubeをはじめ、さまざまな媒体で情報を得ることができる。すごいのはプロモデラーが自分の技術を動画で無料配信していること。実際にどんな風に組み立てているのかが見られるというのは、雑誌100冊読んでも身につけられない情報が含まれているので必見だ。
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映像美もシネマティックと呼ぶのに相応しいクオリティの新世代のプラモチャンネル、『BCN+R』より 引用)
プロモデラーが作っている一挙一動を見られるというのはとても新鮮だ。これまでどうすれば良いのかわからなかった塗装や墨入れの技術を解説付きで見ることができる。エアブラシの使い方だけとっても、どのくらいの濃度に薄めるかを空気の「ゴポゴポ」という音で判断する、といったように動画からしかわからない情報がたくさんある。こうした情報が無料で得られるだけで、自分の作品クオリティが飛躍的に上がる。昔好きだったという読者は再び趣味として始めると資金力も相まって当時の10倍は楽しめるかもしれない。
組み立てるだけでも楽しい、驚くべきプラモデルの進化
昔は素組みに少しシールを貼る、というのが一般的なプラモデルの楽しみ方だったように思う。ただそれだけではアニメに登場する機体とはギャップがあり、物足りなかった。しかし最近のプラモデルはHG(ハイグレード)であっても素組みでかなりの満足度を得られるようなパーツ構成になっている。
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写真は実際筆者が作ったHGナイチンゲールだが、組んだだけなのにカラーリングといい、かなりかっこよく仕上がっている。もちろんここに塗装やデカールを施せばさらに満足度が高まるが、素組みに墨入れだけでもかなりレベルが高く見えるのは最近のプラモデルの進化の賜物と言えるだろう。
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補足だが、HG、MGなどプラモデルのグレードにも言及しておきたい。現在販売されているガンプラのグレードは全部で4種。HG(ハイグレード)、RG(リアルグレード)、MG(マスターグレード)、PG(パーフェクトグレード)に分類されている。最も安価なのはHGで、1/144スケール、約13cmと大きさもコンパクトだ。HGの利点は多くの機種がリリースされている点で、最近のHGは前述した通り「塗装をしなくても完成する」がテーマになっている。ただ、パーツ数は全グレードの中で最も少ないため、組み立てだけで”それなりに”リアルになるという表現が適当だろう。
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サイズが大きいほど満足度も増すが、高額になっていく、『BCN+R』より 引用)
RGはHGと同じ大きさだがパーツ数は断然多い。「手のひらサイズで本物のようなリアルなものを」をテーマに策定されている。色もHGで1パーツ1色だったものが、RGでは1パーツ2~3色に増えているためより満足度が高い。デカールも付属しているので、リアルさを素組みで追求したい人にはHGよりRGがおすすめだ。
さらにMG、PGとグレードとともに、価格や大きさも上がっていく。PG策定以前はMGが最上級だったが、現在はMGが「高級品ガンプラ」、PGが「究極のガンプラ」という立ち位置になっている。大きさが増すことでパーツのディテールもより精細になり、必然的にリアルで満足度の高い製品になる。ただ、PGともなると数万円という値段になるため、おいそれと手を出せない点はデメリットかもしれない。また、MGやPGは大きさが18cm~30cmとかなり大きいので、飾るにも場所を取る点は考慮すべきだろう。