ミャンマーで発見された約9900万年前の琥珀から、絶滅両生類の「アルバネルペトン科」は、カメレオンのような発射式の舌を持っていたことがわかりました。

また、琥珀中の個体は新種と判明しており、「ヤクシャ・ペレッティ(Yaksha perettii)」と命名されています。

yakshaはヒンドゥー語で”秘宝を守る精霊”を意味し、perettiiは琥珀を発見したアドルフ・ペレッティにちなんでいます。

研究は、11月6日付けで『Science』に掲載されました。

目次
当初は「太古のカメレオン」と誤認されていた
地球で最初に「発射式の舌」を獲得した生物か

当初は「太古のカメレオン」と誤認されていた

この化石は、新種と判明するまでに多難な道をたどってきました。

研究チームのエドワード・スタンリー氏(フロリダ自然史博物館)とフアン・ディエゴ・ダザ氏(サム・ヒューストン州立大学)は、化石の個体を「太古のカメレオン」と断定し、2016年に論文発表していたのです。

しかし、論文を読んだユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの古生物学者、スーザン・エバンス氏が「カメレオンではなく、アルバネルペトン科の生物ではないか」とダザ氏に連絡しました。

ダザ氏はそのときの心境について「人生最悪の日のひとつだった」と振り返ります。

さらに、化石発見者のペレッティ氏から「ミャンマーの同じ地域で見つかった化石がもうひとつある」との連絡がありました。

そこから、エバンス氏も参加し、再調査が始まっています。

1億年前の琥珀から”新種の両生類”を特定、「ショットガン式の舌」を持っていた
(画像=頭蓋骨が保存された琥珀 / Credit: Peretti Museum Foundation、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、琥珀中に保存された頭蓋骨の状態が驚くほど良いことに驚きました。

スキャン画像を撮ったところ、立体的な形状が完璧に残っているだけでなく、舌骨や軟組織まで保存されていたのです。

頭蓋骨のサイズから、新種の全長は成体で約5センチほど(尻尾は含まない)と見られます。

1億年前の琥珀から”新種の両生類”を特定、「ショットガン式の舌」を持っていた
(画像=保存状態の良い頭蓋骨 / Credit: sciencemag、『ナゾロジー』より引用)

地球で最初に「発射式の舌」を獲得した生物か

ここから、化石の個体は太古のカメレオンではなく、アルバネルペトン科の新種と判明しました。

その一方で、「発射式の舌」というカメレオンとの大きな共通点も見つかっています。

頭蓋骨の骨や軟組織を調べてみると、舌をショットガンのように放つための舌骨や筋肉の痕跡が発見されたのです。

1億年前の琥珀から”新種の両生類”を特定、「ショットガン式の舌」を持っていた
(画像=舌を発射するための仕組みが備わっていた / Credit: sciencemag、『ナゾロジー』より引用)

カメレオンの舌の発射速度は、動物界でも最速の部類に入り、舌を収縮させることでエネルギーを蓄え、その反動でバネのように発射させます。

新種の「ヤクシャ・ペレッティ」も同様の能力を持っていた可能性が大です。

1億年前の琥珀から”新種の両生類”を特定、「ショットガン式の舌」を持っていた
(画像=細長い軸が「舌骨」 / Credit: sciencemag、『ナゾロジー』より引用)

さらに、アルバネルペトン科の出現は、少なく見積もって約1億6500万年前と推定されており、エバンス氏は「地球で最初に”発射式の舌”を獲得した生物ではないか」と考えています。

アルバネルペトン科は、魚類から進化した両生類に属し、水辺の陸地に住んでいました。爬虫類はその両生類から進化し、水辺から離れた場所でも暮らせるようになります。

研究チームは「発射式の舌を持っていたことは、アルバネルペトン科について新たな示唆を与えるとともに、爬虫類と近似した特徴を持つため、両生類〜爬虫類への進化の歴史を詳しく解明できるかもしれない」と話します。

1億年前の琥珀から”新種の両生類”を特定、「ショットガン式の舌」を持っていた
(画像=虫を捕まえる「ヤクシャ・ペレッティ」、頭上には樹脂が垂れてきている / Credit: Peretti Museum Foundation、『ナゾロジー』より引用)

しかし、同じ両生類のカエルやサンショウウオ、イモリが現存するのに対し、アルバネルペトン科が絶滅した理由はまったくもって不明です。

アルバネルペトン科は、化石上の記録から約200万年前に絶滅したと見られます。

もしかしたら、私たちが気づいていないだけで、彼らは今もどこかで生きているのかもしれませんね。


参考文献

floridamuseum

theconversation


提供元・ナゾロジー

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