ヒヅメを持つ有蹄類(ゆうているい)の中で、ウマとサイは同じ「ウマ目(奇蹄目、きていもく)」に分けられますが、その祖先のくわしい起源はわかっていません。

しかし今回、アメリカ・ジョンズ・ホプキンズ大学の研究により、約5500万年前に存在した「​カンベイテリウム(Cambaytherium)」という生物が共通祖先の可能性が高い、と発表されました。

カンベイテリウムは、インド亜大陸を起源にすることから、現代のウマやサイはインドから世界に広がったと考えられます。

研究は、11月5日付けで『Vertebrate Paleontology』に掲載されました。

目次
ウマの祖先は「イヌとブタの雑種」のようだった?
現代のウマやサイは「インド」から世界に広がった

ウマの祖先は「イヌとブタの雑種」のようだった?

今回の結果は、30年前に初めて唱えられた仮説(ウマ目の祖先はインドで誕生、進化したのではないか)にもとづき、研究チームが十数年前から始めた調査の集大成です。

チームは2004年に、インドでカンベイテリウムの骨の一部を発見し、現在までに350以上の化石断片を見つけています。

そこから、カンベイテリウムの全体像を復元することに成功しました。

「ウマとサイは仲間」インドにあった化石から”共通の祖先”を復元、ウマのルーツが明らかに
(画像=『ナゾロジー』より引用)

化石の年代測定から、カンベイテリウムの出現時期は約6600〜5500万年前のことで、恐竜が絶滅した直後でした。

復元した化石を、他の現生および絶滅した有蹄類と比較すると、既知のどの有蹄類よりも原始的であることが判明してます。

研究主任のケン・ローズ教授は「足先にはヒヅメのついた5本の指が生えており、大きさはヒツジ程度で、イヌとブタが混ざったような外見をしていた」と指摘しました。

また、骨格の状態から「そこまで速くはないものの、走行にほどよく長けていた」とのことです。

「ウマとサイは仲間」インドにあった化石から”共通の祖先”を復元、ウマのルーツが明らかに
(画像=『ナゾロジー』より引用)

現代のウマやサイは「インド」から世界に広がった

化石上の記録によると、ウマ目は約5000万年前に北半球全域に広がっていますが、その起源がどこにあるか不明でした。

しかし、今回の結果から、インドに出現したカンベイテリウムこそ、あらゆるウマ目の直接的な祖先と推測されています。

6〜7000万年前のインドは、まだユーラシア大陸に繋がっておらず、孤立した大きな島となっていました。

「ウマとサイは仲間」インドにあった化石から”共通の祖先”を復元、ウマのルーツが明らかに
(画像=インド亜大陸の移動と衝突 / Credit: usgs、『ナゾロジー』より引用)

それがおよそ5000万年前に南アジアに衝突して、地続きとなります。

ローズ氏は「インド亜大陸がユーラシアと繋がったことで、カンベイテリウムは進化を続けながら、今日のヨーロッパやアメリカへと拡散していったのでしょう」と説明します。

また一方で、孤立状態にあったインド亜大陸には、カンベイテリウムと同時期のヨーロッパに存在した霊長類やげっ歯類の化石も見つかっています。

彼らが、ユーラシア大陸から海を横断してインドへたどり着くのはどう考えても不可能です。

「ウマとサイは仲間」インドにあった化石から”共通の祖先”を復元、ウマのルーツが明らかに
(画像=アフリカの角(ソマリア全域とエチオピアの一部) / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

これについて、ローズ氏は「おそらく、北上中のインド亜大陸が、アラビア半島やアフリカの角とニアミスした際に陸続きになった一部のルートを通ったのでしょう」と推測しています。


参考文献

scitechdaily

dailymail


提供元・ナゾロジー

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