フランスのジャック・ルージェリー財団は独創的な建築技術革新を推進する団体であり、2011年以来国際建築コンテストを開催してきました。
そして2020年「海の革新と建築」部門に提出された1694件のプロジェクトのうち、7位にランクインしたアイデアが話題になっています。
その建築プロジェクトとは、イランの建築家であるsajjad navidi氏が考案した「ペンギン保護システム」です。
目次
ペンギン保護システム①:ペンギンの家
ペンギン保護システム②:水中冷却装置
ペンギン保護システム①:ペンギンの家
南極の氷が解けていくにつれて、そこに生息するコウテイペンギンは絶滅に向かっていると言われています。
なぜならペンギンが産卵するためには南極の棚氷が不可欠だからです。
navidi氏はこの絶滅問題に対処するため、「ペンギン保護システム」を考案し、コンテストに応募しました。
このペンギン保護システムは2つの構造物から成り立っています。
1つは氷上に建てられた圧雪ブロックの「イグルー」です。
イグルーとはツンドラ地帯に住む先住民族がかつて利用していた「かまくら」のような形の雪の家であり、navidi氏は、人間ではなくペンギンが入るためのイグルーを考案。
ペンギンのためにイグルーを作るという発想は、ペンギンたちの「ハドル」と呼ばれる行動戦略から得られたものです。
このハドルとは、ペンギンがエネルギーを節約し寒さから身を守るために輪状になって身体を寄せ合う群れのことであり、気温がマイナス30℃以下になることもある南極では不可欠です。
そのためイグルーが建てられるなら、ペンギンのエネルギーが節約され、繁殖にも良い影響があるとのこと。
もちろん、ペンギン保護システムの特色はこれだけではありません。氷の融解にも対応しているのです。
ペンギン保護システム②:水中冷却装置
ペンギン保護システムの2つ目の構造物は、イグルーの下につくられた多孔質の冷却装置です。
水中に作られたこの装置には振り子のようなボールが装着されています。
そしてこのボールが波の力で動く時、そのエネルギーを利用して発電。この電力によって冷却ファンが稼働し、周囲の水を冷却するという仕組みです。
実際、実験室では水中の氷が冷却システムによって徐々に冷却され1つの氷床を形成しました。
ペンギン保護システムでは、同様のプロセスを氷の融解で困っている南極でも行おうというのです。
ちなみに、水中冷却装置はイグルーから分離可能であり、融解氷域を識別して移動するとのこと。
移動した先では再び氷にとりつき、頑丈な氷床を形成してくれます。
さて、navidi氏が考案したペンギン保護システムを紹介してきました。
ペンギンに「寒さから身を守る場所」と「産卵するための氷床」を提供するという非常にユニークな構造物でしたね。
このアイデアが実現するかどうかは不明ですが、今後も環境問題に対処するための斬新なアイデアは必要です。
こうした発案が続くことで、いずれ大きな革新技術が生まれるのかもしれませんね。
提供元・ナゾロジー
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