2億3300万年前、カナダの西海岸にあたる地盤で巨大な火山噴火が起こり、二酸化炭素、メタン、水蒸気が大量に大気中へ解き放たれました。
この激しい爆発により太古の地球は大規模な温暖化に見舞われました。
9月16日に科学雑誌『Science Advances』に掲載された新しい研究は、これが新しい大量絶滅イベントであった可能性があり、この出来事がきっかけで恐竜たちの台頭始まったと報告しています。
大量絶滅イベントは、「ビッグファイブ」の名で知られる通り地球上では5回発生しているというのがこれまでの通説でした。
果たして新発見となる6番目の大量絶滅とはいかなるものだったのでしょうか?
目次
地球に起きた変革「カーニアン湿潤化イベント」
これまで知られていなかった新しい大量絶滅イベント
大量絶滅イベントからの回復と近代的な生態系の成立
地球に起きた変革「カーニアン湿潤化イベント」
恐竜が出現し始めた約2億3000万年前は、地質年代では後期三畳紀の初めにあたる時代で、カーニアンと呼ばれています。
この時期にはカーニアン湿潤化イベント(Carnian Pluvial Event: 以下、CPE)と呼ばれる地球規模の気候変動が発生して生物相に大きな変化が起こっていたと考えられています。
この出来事は1980年代に注目されましたが、その証拠となる地質はヨーロッパの一部地域に限定されていました。
その後の調査で、この時期にはアンモナイトの絶滅など海洋生物の大規模な入れ替えが起きていたと確認されていましたが、CPEとの関連については年代測定技術がまだ未熟だったこともあり、明らかではありませんでした。
しかし、中国地質大学、イギリス・ブリストル大学などの共同による研究チームが、この時期のすべての地質学や生物学的な証拠を検討して、何が起きたのかを明らかにしたのです。
これまで知られていなかった新しい大量絶滅イベント
CPEの原因は、おそらくカナダ西部にあるランゲリアと呼ばれる地域の大規模な火山噴火だっただろうと考えられています。
そこでは大量の玄武岩が地上にもたらされ、北アメリカ西海岸の大部分を形成しました。
この火山活動はカーニアンにピークを迎え、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを大量に排出しました。
これにより、地球は大規模な温暖化に向かったのです。温暖化は降雨量の増加と関連しています。それが100万年に及ぶ湿気の多い時代、カーニアン湿潤化イベントを引き起こしたと考えられるのです。
噴火で巻き上げられた火山性ガスは、この大規模な大雨に混ざって地球上に酸性雨を降らせ、海の浅い層を酸性化させました。
この酸性雨と急激な温暖化は、熱帯地域の動植物を壊滅させ、酸性雨は地上の植物に大打撃を与えたのです。また酸性化した海洋は炭酸塩の殻を持つ海洋生物を壊滅させました。
こうして新たな大量絶滅イベントが地球で発生していたことが明らかとなったのです。