近年、その知名度が高まっている先進医療。ほとんどの医療保険やがん保険には先進医療特約をセットすることができるが、この特約は本当に必要なのだろうか。また先進医療特約は保険会社によって内容が異なるため、検討する際は注意が必要である。
先進医療とは?制度の概要と実際にかかる治療費
日本では混合診療が認められておらず、健康保険対象外の治療を受けた場合、健康保険対象の治療にかかる費用も含め、その全てが全額自己負担となる。
しかしこれには例外があり、厚生労働省により「先進医療」として認められた治療を受ける場合、先進医療の技術料については全額自己負担となるものの、その他の診察料や検査料、入院料などについては健康保険の対象になるのだ。
先進医療の技術料は約1,000円~540万円
厚生労働省により認可されている先進医療は2017年6月末時点において100種類あり、実施件数・患者数ともにここ5年間は増加傾向にある。
では、先進医療を受ける場合にかかる費用は具体的にどのくらいなのだろうか。厚生労働省の発表によると、先進医療の技術料は以下のようになっている(2017年6月末時点)。
- 重粒子線治療……314万円
- 陽子線治療……276万5086円
- 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術……58万1224円
- オクトレオチド皮下注射療法……541万269円
定量的CTを用いた有限要素法による骨強度予測評価……1023円
先進医療に対して、「高額な費用がかかる治療」というイメージを抱いている人は少なくない。確かに、重粒子線治療や陽子線治療のように数百万円の費用がかかる治療もあるが、中には数千円で受けられる先進医療もあるのだ。
誰もが先進医療を受けるわけではない
先進医療を受ける人の数が増えているとはいえ、誰もがこの治療を受けることになるわけではない。
がんの治療法として注目されている陽子線治療や重粒子線治療も全ての症例が対象になるわけではなく、先進医療を選択しないケースもある。先進医療はあくまで、選択肢のひとつに過ぎないのだ。
先進医療特約は必要?どんな人が検討するといいのか
先進医療特約は、医療保険やがん保険に月額100円前後で付加することができる。安い保険料で先進医療にかかる費用の保障を受けられるのは非常に魅力的だが、この特約だけを目的として新たに保険に加入したり、保険の見直しをしたりすることはおすすめできない。
生命保険は年齢に比例して保険料が上がるため、どうしても先進医療特約を付加したい場合は契約そのものを見直すのではなく、現在加入している保険契約への「中途付加」を検討するといいだろう。
以下に当てはまる人は、先進医療特約について検討してみてもいいのではないだろうか。
- 現在、医療保険への新規加入を検討している人
- 更新時期が近付いているなど、保険の見直しを検討していた人
- 病気になった場合のために、手厚い保障を用意しておきたい人
先進医療特約について検討する際のポイント2つ
先進医療特約の内容は、生命保険会社によって異なる。契約してから「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、先進医療特約について検討する際は最低限、以下の2つのポイントについて確認しておきたい。
検討中の先進医療特約は全期型か更新型か
先進医療特約は、全期型と更新型に分けられる。全期型の先進医療特約は、保険期間を通して特約保険料が上がることがない。
一方、更新型の先進医療特約は、約定の期間ごとに特約保険料の見直しが行われる。そのため保険料の上がらない終身タイプの医療保険に加入していても、先進医療特約の特約保険料については値上がりする可能性があるのだ。
直接支払制度の有無についても必ず確認
生命保険会社の中には、先進医療特約に関して「直接支払制度」を設けているところがある。これは、医療機関に先進医療にかかる技術料相当額を保険会社が直接支払う制度のことで、これにより被保険者は、治療費を立替える必要がなくなるのだ。
先進医療特約について検討する際は、直接支払制度の有無についても必ず確認しておくことが大切だ。
文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)
【関連記事】
・ネット証券は情報の宝庫?日経新聞から四季報まですべて閲覧可!?(PR)
・40代で「がん保険」は必要か?
・40歳から効率的にお金を貯めるための6つのステップ
・共働きの妻が産休・育休中でも夫の「配偶者控除」を受けられる 意外と知らない節税法
・40代が知っておきたい保険の知識まとめ