期間限定の商品やサービスを強化

9階の「祝祭広場」やギャラリーなど各種イベントスペースを使った、エンターテインメント型のイベントにも力を入れている。これも、①と②に通じる戦略だと言えよう。「その期間でなければ、その商品が買えない、そのサービスが受けられない」と思えば、売場につい行ってしまうという、人間の心理をついたものだ。最近のイベントの例を、佐藤氏に紹介してもらった。
「2021年の夏休み期間中、全館を挙げてお子さん向けのイベント『HANKYUこどもカレッジ』を実施した。店内アナウンスに挑戦してみたり、パティシエと一緒にお菓子を作ってみたりといったお仕事体験など約60のプログラムを用意し、親子で楽しめる企画にした。コロナ禍で夏休みのイベントが減ってしまったこともあり、とても好評で、約1500人のお客さまにご参加いただいた」(同)
コロナ禍で人と会う機会が減った影響などもあってか、絆を大切にしたい人が増え、化粧品や服飾雑貨、スイーツなどのギフト需要も高まっていると、佐藤氏は指摘する。「例えば、1月中旬から9階のみならず全館で開催した『バレンタインチョコレート博覧会』の売上は、コロナ前の実績に迫る24億円と好結果だった」(同)
そのほか、『スヌーピー』とのコラボレーションで、各フロアにスヌーピーとの撮影スポットを設けたり、スタンプラリーを実施したプロモーションイベントも人気だった。世界のクッキーや紅茶を集めたフェアなども、全国から集客できたという。
さらに、催事では、ほかの百貨店との協業も進めている。例えば、英国関連の商品の販売や、グッズを展示しながらライフスタイルを紹介する「英国フェア」などの海外フェアは、阪急うめだ本店のソーシング能力が発揮され、オリジナル商品も多いので、集客力の高い企画だという。仕入れ先からは、出展の機会を増やしたいという要望も多い。そこで、「2022年から、首都圏や地方などの百貨店で、英国フェアだけを出張して、開催してみることにした」(同)

つまり、他社の百貨店内に、阪急うめだ本店が期間限定とはいえ、“出店”する形になる。客との接点を拡大し、そこでの体験を通じてオンラインでもつながり、阪急うめだ本店の来店動機も高めるという、意欲的な取り組みと言えよう。
提供元・DCSオンライン
【関連記事】
・「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測
・ユニクロがデジタル人材に最大年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
・1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは
・全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは
・キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」