まるでSFのようなドローン技術が登場しました。
中国・浙江大学(せっこうだいがく、Zhejiang University)に所属するロボット工学者シン・ジョウ氏ら研究チームが、編隊を組んで飛行できるドローンを開発したのです。
実験では、10機ものドローンが互いに情報共有しながら、隊形を崩さずに竹林を飛行できました。
自然保護や災害救援、軍事への利用が予想されます。
研究の詳細は、2022年5月4日付の科学誌『Science Robotics』に掲載されました。
目次
編隊を組んで飛行するドローン
情報共有しながら最善のルートを飛行するドローン隊
編隊を組んで飛行するドローン
新しく開発されたドローンは手のひらサイズであり、ジュース1本よりも軽くつくられています。 自律的に飛行し、障害物を避けつつ目的地までたどり着けます。
そして重要なポイントは、複数の機体で編隊を組んで飛行できる点にあります。
これまでにもドローンの編隊飛行はテストされてきましたが、それらは障害物のない場所で行われていました。 ところが新しいドローン群体は、ランダムな障害物であふれている竹林で、隊形を崩さず飛行できます。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のロボット工学者エンリカ・ソリア氏も、「構造化されていない自然環境で、ドローン群体が飛行するのは、これが初めてです」と述べています。
動画では10機のドローンが編隊を組んで飛行していますが、互いに衝突したり、障害物に当たったりしていません。 では、これらのドローン群体は、どのようにして隊形を維持しているのでしょうか?
また編隊飛行にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
情報共有しながら最善のルートを飛行するドローン隊
各ドローンには、距離情報を取得する「深度カメラ」や高度を計測する「高度センサー」が備わっています。
そして得られた情報をドローン隊で共有し、周囲の地図を作成。
これにより1機だけでは導き出せない「最善のルート」を算出できるのです。
共有された情報で各ドローンのルートが決定されるため、隊形が崩れないのですね。
しかも各ドローンは、GPSなどの外部情報に依存していません。
そのため自然災害時などでも、ドローン隊が現地の情報を集めつつ、その場で最善の決定を下せます。
例えば、地震の被災地にドローン隊が送り込まれると、被害状況を確認し、どこに救援を送るべきか、被災者をどこに送り届けるべきか判断できるでしょう。
飛行時間が限られるドローンだからこそ、群体による素早いアプローチと判断が効果的なのです。
また、ドローン隊の能力は追跡任務でも役立ちます。
ドローン群体のうち、1機さえターゲットを見失わなければ目的を達成できるからです。
どんな動物や人間も、広範囲にアンテナを張り巡らすドローン隊から逃れることなどできないでしょう。
さて、ここまで考えると、編隊飛行できるドローンが今後どのように利用されるのか気になるかもしれません。
研究チームは、自然保護や救援活動に言及していますが、軍事に利用される可能性は大いにあります。
もしかしたら将来、武器を搭載した自律型ドローン隊がチームプレイしながら、人々を襲うことがあるかもしれません。
まるでSFのような内容ですが、現在、技術的にはほぼクリアしています。
参考文献
Incredible Footage Shows Drone Swarm Navigate Thick Forest With Eerie Precision
Watch a swarm of drones autonomously track a human through a dense forest
元論文
Swarm of micro flying robots in the wild
提供元・ナゾロジー
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