よく化石や地層の年代調査で炭素年代測定という単語を耳にすることがあります。
そのため、なんか炭素を調べると年代がわかるのね、と漠然と理解している人は多いでしょう。
しかし、これは具体的にどんな測定方法なのでしょうか?
目次
放射性炭素年代測定ってなに?
地球上では珍しい炭素14の残量
放射性炭素年代測定ってなに?
炭素で年代が測定できるというのはどういうことなのでしょうか?
炭素は地球上でありふれた元素のため、さまざまな物質中に多少なりとも含まれています。
植物は光合成のために二酸化炭素が必要であり、生き物はその植物を食べるため、体内に炭素を多く取り込んでいます。
こうした炭素は、土壌や化石などあらゆる場所に蓄積されていきます。
この炭素は同じ様に見えていくつかの種類が存在します。
そして、種類によって炭素の寿命や地球上に存在している割合が異なっているのです。
そのため、年代を調べたい物質の試料(サンプル)に含まれる寿命の短い炭素の数を調べることで、それがどれくらい時間が経過した物質なのか判断できるのです。
当然大昔の物質ならば、寿命の短い炭素の数は少ないし、最近のものなら寿命の短い炭素もたくさん含まれているということになります。
ここまで、ふわっとした言い方をしましたが、この寿命が短い炭素というのが「炭素14」です。
「炭素14」は炭素の放射性同位体と呼ばれていて、通常の炭素より原子核内の中性子数が多くなっています。
通常の炭素は、陽子6個、中性子6個の計12個の粒子で原子核が構成されていますが、炭素14は陽子6個、中性子8個の計14個の粒子で原子核が作られます。
では、中性子の数が多いというのはどういうことなのでしょうか?
原子の化学的性質は、原子核内にある陽子の数で決まっています。
そのため電荷を持たない粒子である中性子が増えても、原子は重くなるだけで化学的な性質が変わりません。
普通に二酸化炭素にもなるし、私たちの身体にも取り込まれていきます。
しかし重い原子は不安定なため、放射性崩壊を起こして余分な重さを捨て去ることで、もっと安定した物質へ変化しようとします。
炭素14に含まれる余分な中性子は、ベータ崩壊という現象を起こして電子やニュートリノを捨てることで陽子に変化します。
原子核内の陽子の数が増えるということは、その原子が別の原子に変化するということを意味します。
炭素の陽子は6個ですが、これが7個になると窒素になります。
こうして炭素14は窒素14に変わるのです。
つまり炭素14は死ぬわけではなくて、窒素14に転生するわけです。
そして興味深いのが、こう した原子の変換は、ある一定期間で必ず決まった確率で発生していくということなのです。
ここが放射性炭素年代測定法のミソとなる部分です。
次項でここについて説明していきましょう。
地球上では珍しい炭素14の残量
放射性崩壊は量子力学的な現象で、その発生原理は確率に支配されています。
原子核には個性がなく年齢といった概念も存在しないため、同じ炭素14の原子核が複数あったとき、このうちのどれがいつ崩壊するかはまったくわかりません。
しかし必ず、ある一定期間の間に崩壊する原子の数は確率で決まっています。
さっき寿命が短いとか言っいたのに、年齢がないとはどういうことか? と思うかもしれませんが、炭素14のいわゆる寿命にあたるものが「半減期」と呼ばれるものです。
「半減期」とはある不安定な元素(放射性物質)の集まりにおいて、その半分が崩壊して、別の安定した原子に変わるまでの期間を表したものです。
ちょっと分かりづらい概念かもしれませんが、「半減期」という用語は、原発のニュースなどで聞き覚えのある人も多いでしょう。
これ聞いたとき「なんでそんな中途半端な表現をするんだろう?」と思った人もいるかもしれません。
そういう人はおそらく「半減期で半分になるなら、2倍の期間でなくなるんでしょ? それを言えばいいじゃない」と思ったかもしれません。
しかし、半減期を経て残った放射性物質は、次の半減期を経てさらに半分になるだけで全部が崩壊はしません。
ある放射性物質に対して言えることは「これだけの時間が経過したら、崩壊する確率が50%」というだけなのです。
そのため最終的に放射性物質の量については、アキレスと亀みたいな話になってしまいます。
そして炭素14の半減期は5730年です
そのため、例えばある化石に含まれる炭素14の量が、推定される濃度の4分の1しかなかった場合、それは化石の中に炭素14が取り込まれてから2回の半減期が過ぎたと判断することができるのです。
つまりこの化石の年代は(5730年*2=11460年)以上昔のものだと推定できます。
しかし、こういう方法で年代を特定しているとなると、精度について少し疑問を抱く人も出てくるでしょう。
確率とか言ってるし、本当に当てになるの? という疑問は当然のことかもしれません。
最後は、炭素14がどのように発生するものなのか? そしてこの測定の精度はどう理解すればいいのかについて説明します。