緑の党は「平和主義」を卒業したのか
戦後から75年以上、欧州大陸では戦争はなかったこともあって、平和主義が社会に定着している。その社会に突然、最も忌まわしい戦争が起きた。欧州の平和主義者はその対応に苦慮しているわけだ。ただし、ウクライナ戦争の場合、被害者と加害者は明確だ。プーチン大統領は国際法に違反して自由な独立国を攻撃し、都市を破壊し、民間人を殺害しているからだ。
ドイツの「緑の党」は久しく平和主義を党是としてきた。同党のヨシュカ・フィッシャー氏がシュレーダー連立政権下で外相に就任し、1999年、連邦軍をコソボに派遣した。その結果、フィッシャー氏は党大会で反戦支持者から赤い塗料の入ったカラー・ボールを投げつけられ、鼓膜が破れるなど負傷した。
ハベック氏も地方の党集会で「戦争扇動者」という批判を受けている。「緑の党」が平和主義信仰から完全に抜け切れるまでにはまだ時間がかかるだろう。
ただ、「緑の党」はハベック氏が登場し、メルケル政権時代のロシア政策と過去の党の平和主義から別れを告げ、国防問題にも積極的に関与す政党に変わってきたことは間違いない。
ハベック氏自身、「国防問題と環境保護は密接に関わっているテーマだ」と述べている。なお、シュピーゲル誌は「武器供給問題で『緑の党』の党指導部は一致している。党内で分裂があるのはショルツ首相のSPDだけだ」と評している。
戦後ドイツの政治にターニングポイントをもたらしたウクライナ戦争の停戦の見通しはまだ見えない。ショルツ首相、ハベック副首相、ベアボック外相らの真価はこれから問われてくる。ハベック氏の登場でドイツが世界の政治の表舞台に復帰する日が近づいてきているのを感じる。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年5月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
文・長谷川 良/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?