注目基調講演を解説、インスタカート、サムズクラブが登壇

 ここからはショップトークでとくに注目を集めていた講演について見ていこう。メインステージで行われた基調講演はGoogleやUber、Revlonなど12の企業からCEOやPresidentが登壇した。ここではその中でもとくに興味深かった3社について紹介したい。

 まず挙げたいのが、インスタカート(Instacart)だ。同社からは7カ月前にCEOに就任したFidji Simo氏が講演を行った。インスタカートは過去10年間、オンライン買物代行を主軸としてきたが、ここ3~4年は広告事業で大きな成果を上げている。

 直近では、上場の延期や評価額の引き下げなどが発表されており、この点について「長期的に優れたビジネスを構築し、小売業を支援することに集中したい」という方針を明確にした。そのために「Instacart Platform(インスタカート・プラットフォーム)」の拡充が必要であり、優秀な人材を確保しなければならないと意思表示をした。このインスタカートの講演については、次回の記事で詳しく解説する。

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(画像=『DCSオンライン』より 引用)

 続いてウォルマート(Walmart)傘下の会員制スーパーマーケットであるサムズクラブ(Sam’s Club)からはCEOのKath McLay氏が登壇した。同社は会員制スーパーマーケットではコストコ(Costco)に次ぐ米売上第2位のチェーンであり、新規会員獲得数も過去最高となっている注目企業だ。

 講演では、2017年より開始した「Scan & Go」「カーブサイド・ピックアップ」などの取り組みが、ミレニアム世代を中心に受け入れられていることなどが語られた。高品質・低価格なメンバーズマークブランドの商品情報をアプリから提供、店頭でのデモンストレーションや店舗内の改装、ロゴの変更などによってブランドの若返りに成功しているのも印象的だった。

 10代の若者向けアパレルを販売しているPacSun(パックサン)からはPresidentのBrieane Olson氏が登壇した。同社はメタバース、NFT(非代替性トークン)に積極的に取り組んでおり、「Roblox(ロブロックス)」「Twitch(トゥイッチ)」などのゲーム配信プラットフォームと連携しデジタルアイテムを販売している。

 たとえば、NFTでは同社のマスコットキャラクターを販売する。メタバース上で展開している「PACWORLD」というデジタルモールでは、自分のショップ内でNFTのコレクションをしたり、それらを紹介したりすることができる。これらの取り組みの目的についてBrieane Olson氏は「消費者との交流とそれによる顧客の理解、ブランドの確立」であるとし、新しい顧客接点の在り方について示唆を得られた。

ショップトークから浮かび上がった6つのキーワード

 本稿では最後にイベントを通して多く使われていたキーワードを6つ紹介したい。

 1つは「決済」だ。とくに「ワンクリック決済」と呼ばれる決済サービスがコンバージョン率およびリピート率を高めると同時に、詐称の検知や防止という観点からも注目されている。

 2つ目は「サプライチェーン」である。小売業界全体として人手不足が深刻な問題となっている。そうした中で、ミドルマイル配送を自動運転で実施する取り組みがドライバー不足解消への有効な手段として期待されている。

 3つ目は「サステナビリティ」。今年からショップトークにおいて、数値化可能な小売企業の改革・リーダーシップ・サステナビリティに貢献した企業4社に「ATLIS Award」が贈られている。昨年のCOP26後、各企業の行動変革が大きく影響している。

 4つ目は「パーソナライゼーション」である。バーチャル試着などから想像できるように、ARやアプリを通して、シームレスなショッピング体験を実現すると同時に、より良い製品開発や在庫管理、顧客の購買行動分析等にデータを活用できる点で注目されている。

 5つ目は「メタバース/NFT」である。VRヘッドセットやアプリ不要で、ウェブ上で高品質の3Dグラフィックスを閲覧できる技術も紹介されている。オンライン上での購買体験をより楽しく充実させるという点で注目されている。

 6つ目は「ライブコマース」が挙げられる。製品関連画面上に消費者を長く滞在させられるという点で注目されており、店舗店員をマイクロインフルエンサーとして教育するという点も話題になっている。

 次回は、ショップトークの基調講演の中でもとくに興味を惹かれた講演の1つ、インスタカートCEOのFidji Simo氏が語った内容について詳しく解説していく。

提供元・DCSオンライン

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