(前回のつづきです)
「そうじゃない国もあるのですか?」
「届け出主義は世界的には少数派のようです。結婚の場合、結婚する2人が役所に行って結婚を誓ったりする国もあるようです。権限を持った判事の前で宣誓する国も」
「日本は結婚も離婚もお役所的な届け出主義なのですか?」
「そうです。昔、私が銀行に勤めていた時、各人の机の上に認印が置かれていたで「この二人、婚姻届を作って、俺達が証人になって結婚させちゃおうか?」などと冗談を言っていたものでした。本当にやったら大変なことでした」
「なんだか、めちゃくちゃ簡単なのですね~それって犯罪にならないのですか?」
「有印私文書偽造等のれっきとした犯罪です。ただ、暴力沙汰でもないと警察はなかなか動いてくれないことが多いです」
「勝手に婚姻届を出されても、訂正できるのでしょう?」
「それがそう簡単じゃないのです。当事者が離婚届を出せば簡単ですけどね」
「それじゃあ、戸籍に離婚歴が残るのでは?」
「その通りです」
「それって本人たちにとって困りますよね」
「裁判所で「婚姻無効」と認められれば離婚歴にはなりませんが、いずれにしても厄介です」
「離婚届が勝手に出されたらどうなるのですか?」
「勝手に出された離婚は無効です。裁判所に離婚無効の訴えを起こすのです」
「裁判所に行かなきゃいけないのですか?こちらも大変ですね!」
「もし、勝手に離婚届を出した夫が他の女性と再婚していたら、再婚の取り消し請求も合わせて訴えます」
「書類一枚偽造されて勝手に出されると大事(おおごと)になるのですね。頭がクラクラしてきました」
「もしも、もしもですよ。本当に夫婦が合意して離婚したら子供たちはどうなるのでしょう?」
「親権者を定めないと、離婚届は受理されません」
「小学生の男の子と0歳の女の子がいます」
「子が未成年者の場合、夫婦のどちらかが、親権者になります」
「親権者って何ですか?」
「親権者というのは、未成年の子の身上監護と財産管理をする親のことです」
「身上監護って?」
「ざっくり言って、子と一緒に生活して衣食住、教育などの面倒を見ることです」
「財産管理は?」
「例えば、祖父などから大金の相続や贈与を受けて子が大金を持っている時、その財産をきちんと管理するようなことです」
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2020年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。
文・荘司 雅彦/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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