(本記事は架空のもので、事実とは関係ありません)
今日は、30代の高橋早苗さんという女性が相談に来られました。「夫婦間のこと」で相談ということで。妻からの相談といえば、夫の不倫とか離婚の相談が多いのですが、ともあれ、お話を伺うことにしました。
「こんにちは、高橋さん。夫婦間のご相談とのことですが、どうなさいました?」
「実は、夫が・・・私との離婚を考えているようなのです」
「何か証拠があるのですか?」
「夫が通勤で使っているバッグの中に離婚届が入っていまして・・・」
「離婚届ですか!」
「ええ、私、もうショックで眠れない夜が続いているのです」
「ご主人の様子に変わった点はありませんか?」
「依然とまったく変わりません」
「外泊したり、帰宅が遅くなったり、休日に頻繁に外出したりとかは?」
「そういうこともありません」
「う~ん、様子に変化なしですか。もしかしたら高橋さんの勘違いかもしれませんよ」
「勘違いって?」
「理由はわかりませんが・・・。別の目的で離婚届を持っていたとか?」
「私と離婚する以外に、どんな目的があるのですか?」
「それはわかりません。ただ、妻に見つかったら確実に紛争の種になるようなものを、安易にバッグに入れておくでしょうか?」
「それもそうですが、私は、もう主人が信じられなくて・・・もしも、離婚届を夫が勝手に出したらどうなるんですか?」
「受理されて戸籍に記載されたら、戸籍上離婚は成立します。以前私が扱った案件で、妻が夫に無断で離婚届を提出して離婚し、他の男性と結婚したという事件がありました」
「そんなことができるのですか?」
「離婚届は、双方の名前の印鑑、証人2人の住所氏名と印鑑があれば作成できます」
「実印とか、いらないのですか?」
「不要です。三文判でも構いません」
「でも、証人が2人もいるから勝手に作成するわけにはいかないでしょう?」
「友達に手伝ってもらうこともあるかもしれませんが、筆跡を変えて三文判を押せば、本人に無断で証人にでっち上げられます」
「そんなに簡単なのですか?」
「役所としては調べようがありません。日本では届け出主義ですから、様式が整っている届け出があれば受理するしかありません」
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2020年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。
文・荘司 雅彦/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?