クリーンエネルギーとして知られる風力発電は、将来的に大きく進化するかもしれません。

イギリスのオックスフォード・ブルックス大学に所属するジョアキム・トフテガード・ハンセン氏ら研究チームは、1万1500時間以上のコンピューターシミュレーションによって、垂直タービンの可能性を見出しました。

垂直に軸をもつ風力タービンはペアで設置したときに互いの性能を15%向上させると判明したのです。

研究の詳細は、科学誌『Renewable Energy』2021年6月号に掲載されます。

目次




従来の風力発電所では互いの効率を下げあっている

現在、一般的な風力発電には「水平タービン」が用いられています。

これは扇風機のように地面に対して水平な回転軸をもつタービンのことです。

風は地面と水平に流れてくるため、水平タービンのブレードは風の力を受けやすく、発電効率が良かったのです。

そのためほとんどの風力発電所には、たくさんの水平タービンが並んでいることでしょう。

まるでヘリコプター。「プロペラの軸を垂直にもつ風力発電機」が未来を変える
(画像=水平タービンは乱気流を発生させるため、他のタービンの効率を下げる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

ところがハンセン氏によると、従来の水平タービンには欠点があります。

彼はその欠点を次のように説明しています。

「風がタービンの最前列に近づくと、下流で乱気流が発生。この乱気流は後列の発電パフォーマンスに悪影響を及します」

「言い換えれば、前列は風力の約50%を電気に変換しますが、後列の場合、その割合は25~30%にまで減少します」


つまり、より効果的に発電するには、複数設置したときの総合的なパフォーマンスを考えなければならないのです。

垂直タービンは互いに良い影響を与える

まるでヘリコプター。「プロペラの軸を垂直にもつ風力発電機」が未来を変える
(画像=垂直タービンによる風力発電の一例 / Credit:ChristianT, wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

ハンセン氏らの研究では、風力タービンの性能を、アレイの角度、回転方向、タービンの間隔、数から詳細に分析。

それぞれの要素や関連性はコンピュータによってシミュレーションされ、1万1500時間以上費やした結果、最善の方法が判明しました。

その結果によると、従来の水平タービンとは回転軸方向が異なる「垂直タービン」が効果的とのこと。

垂直タービンはヘリコプターの羽のように地面に対して垂直な回転軸をもっており、従来の水平タービンよりもコンパクトなサイズになっています。

まるでヘリコプター。「プロペラの軸を垂直にもつ風力発電機」が未来を変える
(画像=垂直タービンを格子状に配置すると全体のパフォーマンスが向上する / Credit:Joachim ToftegaardHansen et al., Renewable Energy(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

また垂直タービンはペアで設置することで互いの性能を最大15%向上させます。

加えて3つのタービンを直列に配置するなら、性能はペアよりもさらに3%向上しました。

これは垂直タービンによって生じる気流が、他のタービンに対してプラスに働いていることを意味します。

研究チームによると、「垂直タービンは接近させて設置できるだけでなく、複数を格子状に配置することで互いに良い影響を与えます。これにより全体のパフォーマンスが向上するのです」とのこと。

さて、今回のシミュレーションでは、風力発電所では「垂直タービン」の採用が適切だと分かりました。

今後は結果の有用性を証明するため、現地での実施テストを行う必要があります。

提供元・ナゾロジー

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