「ジャンプ」は、生物にみられる効率的な移動手段ですが、その構造ゆえに限界があります。
では、生物的な構造に縛られない工学的ロボットであれば、もっと高くジャンプできるのでしょうか?
アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)機械工学科に所属するエリオット・ホークス氏ら研究チームは、工学的ジャンプの限界点に挑戦しました。
その結果、史上最も高くジャンプできるロボットの開発に成功。
バネとモーターを利用したシンプルな構造ですが、30m以上の高さまでジャンプできます。
研究の詳細は、2022年4月27日付の科学誌『Nature』に掲載されました。
目次
生物の限界を超える試み
ジャンプは障害物を乗り越えたり、一気に遠くへ移動したりするための効率的な運動です。
これは地上で生活する生物に備わっている機能であり、足で地面をけり上げることで達成されます。
到達できる実際の高さは人間がつくった「ロケット噴射」に及びませんが、燃料の補充もなく短期間で何度も繰り返せるのは大きなメリットだと言えます。
また体長比で考えるなら、跳躍力だけでも注目に値します。
例えば、体長比で世界一の跳躍力をもつと言われている「アワフキムシ(学名:Cercopoidea)」は、体長の100倍の高さまでジャンプできるのです。
しかし科学者たちは、生物の構造には限界があると感じています。
生物が1回のジャンプのために蓄えるエネルギー量は、その小さな筋肉によって制限されているからです。
では、生物的構造に縛られない「工学的構造」を採用するなら、生き物の限界を超えた跳躍力を生み出せるのでしょうか?
ホークス氏ら研究チームは、跳躍力を最大化するために、生物とは全く異なったジャンピングロボットを開発しました。
ギアとゴムで極限までエネルギーを蓄える「ジャンプ特化型ロボット」
開発されたジャンピングロボットは、炭素繊維のバネとそれらを結び合わせるゴムで成り立っています。
モーターとギアも装備されており、これによってバネを収縮させ、大きなエネルギーを蓄えるのです。
動画のようにバネの収縮を解放することで、驚異的な跳躍力を生み出せます。
しかも1度のジャンプで終わるのではなく、連続してジャンプできる点も実用的だと言えますね。
そしてロボットは全長30cm、重さ30gですが、108フィート(約33m)の高さまでジャンプできました。
体長比100倍以上のジャンプを達成できたのです。
研究チームによると、「私たちの知る限り、これは以前に設計されたジャンピングロボットよりもはるかに高くジャンプでき、生物学的なジャンパーよりも優れている」とのこと。
ジャンプに特化させた構造を採用することで、生物のジャンプを超えたのです。
この構造は、将来宇宙で役立つかもしれません。
例えば月の重力は地球の6分の1なため、チームは「月面上で前方にジャンプすれば、125m以上の高さまで上がり、500mの距離を移動できる」と述べています。
生物ではないからこそ採用できるジャンプ特化型構造。今後、さまざまな分野に応用できるでしょう。
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功